失った人の数より
僕はその日の夜、座敷童子の童子と共に例の女学生の家に向かった。僕の予想通り、彼女の両親は死んでいた。そんな予想は当たってほしくなかったが、このまま死体を放置していたらご両親は成仏できない。
証拠を集めれば三毛猫のジョーを刑務所送りにできるかもしれないが両親と彼女が食べたカボチャの中にあった怨念はもうない。役目を果たしたから消えてしまったのだ。だから、死因は食中毒ということになる。
この家に監視カメラはないし証言を集めたところで警察は妖怪絡みの事件を毛嫌いしているため取り合ってくれない。
だから、この事件は大したものにはならない。良くも悪くも。
「死体の回収や遺品の整理は家の者がやってくれますから雅人さんは彼女の体を家まで運んでください」
「……分かった」
「雅人さん、人間はいつか死ぬ生き物です。いくら便利になってもそれは変わりません」
「ああ、そうだな」
「今回は悲惨な結果になってしまいましたが、彼女はまだ生きています。失った人の数より救えた人の数を数えてください」
「ああ……」
「雅人さん、とりあえずその子を家まで運んでください。それが済んだら私が慰めてあげますから」
「いや、いいよ。多分、時間が解決してくれるから」
「そう、ですか」
僕が彼女をおんぶすると、童子は僕にこう言った。
「雅人さん、私は何があっても雅人さんの味方です。なのでいつでも私を頼ってください。私にできることは何でもしますから」
「……ありがとう。じゃあ、また後でな」
「はい」
僕はその後、彼女の家から出た。その日の月はなんだか僕を監視しているようで気持ち悪かった。




