おまたせしました
私が雅人さんの頭に生えている角に触れると好きという目に見えないものが大きな波となって私に襲いかかってきました。
大きく荒々しい波は私を好きの一部にしようと容赦なく攻撃してきます。私の理性や自我はなんとかそれに対抗しようと抗いますが極薄の紙でできた盾では防ぎようがありません。
私が好きに侵食されるのにさほど時間はかかりませんでした。しかし、それで諦める私ではありません。私は好きを自分なりに理解したり解釈したりして理解できない恐ろしい荒波を徐々になんとなく理解できるものにしていきました。
無事、陸に辿り着いた私が振り返るとそこにはどこまでも青く巨大な海のようなものが私に笑顔を向けていました。
私はそれを見ながら微笑んだ後、波打ち際で目を回している理性や自我を助けてやりました。
さぁ、帰りましょう。もう何も怖くありません。
「……ふぅ……おまたせしました。もう大丈夫です」
「ほ、本当に大丈夫なのか? 僕のことめちゃくちゃにしたいとか思ってないか?」
「それはいつも思っています。まあ、それは主にあなたのせいなので私にはどうすることもできません。しかし、私がこの気持ちを曝け出してもあなたにはきっと届かないでしょうね」
「お、おう」
「さて、それでは始めましょうか。あなたが明日も笑っていられるような未来を守る儀式を」




