それまで頑張ってください
座敷童子の童子が僕の頭に生えた角を見えなくしてくれた。
しかし、どうしても角の効力を完全に封じることはできなかった。
そんな彼女は現在、玄関で申し訳なさそうにしている。
「やられました。普通なら、こんな大雑把な霊力の塊に文字の力が押し負けることはないのですが、あのバカ鬼の霊力は底なしですから私の力ではこれが精一杯です」
「そうかー、お前にもできないことがあるんだな」
「今回はたまたまです。まあ、遅くても今日の夕方には対抗できる文字を使えるようになりますから、それまで頑張ってください」
頑張る? 何をだ?
「へえー、お前にも使えない文字があるんだなー」
「私は座敷童子です。基本的に日常生活で使うものしか使えるようにしていません」
えっと『拘束』は日常生活で使う場面あるのか? まあ、いいや。
「そっか。じゃあ、いってきまーす」
「待ってください」
「なんだ?」
僕が振り向くと彼女は僕の頬にキスをした。
「え? ちょ、今のなんだ?」
「おまじないです。雅人さんがその角を悪用しないとは限りませんから」
「そ、そんなことするわけないだろ! じゃあ、いってきます!」
「はい、いってらっしゃい」
「お兄ちゃん、待ってー!」
「旦那様ー! 置いていかないでくださーい!」
さてと、掃除でもしながら文字をインストールしましょう。あー、忙しい忙しい。




