部員集め
僕は幼馴染の『百々目鬼 羅々』と共に部活を作ることになった。
まあ、とにかく部員がいないと話にならないため、僕たちは部員を集めることにした。
「ねえ、雅人ー。うちのクラスに帰宅部って何人いるー?」
休み時間になった瞬間に僕のところに来るのはやめてほしいが、彼女は気になったら即行動する性格なので僕は仕方なく彼女の質問に答えた。
「まあ、だいたい十人前後くらいだと思うぞ」
「えー、少なくない? うちは強制じゃないんだから、もっといても良くない?」
たしかにそうかもしれないが、うちは運動部も文化部も全国にその名を轟かせている強豪校だ。
だから、才能の塊みたいな連中が勝手にやってくる。
その結果、帰宅部はほとんどいないという状況にある。
「まあ、それは仕方ない。とにかく、まだどこにも入部していない一年生を探しに行こう」
「そうだねー。じゃあ、昼休みに一年生の教室に突撃しよう」
「それはやめてくれ。恥ずかしいから」
「えー、それが一番手っ取り早いじゃん」
たしかにそうかもしれないが、そんなことをしても逆に警戒されてしまう。
さて、どうしたものかな。
「まあ、待て。あと三人部員を集めれば生徒会に申請書を提出できるんだから、昼休みに屋上とか木の上とか図書室に行ってみようよ」
「えー、そんなところ根暗か、ぼっちしかいないじゃん」
ストレートにそう言うこというなよ。
まあ、たしかにそうだけどさ……。
「他の部が目をつけてないやつを探すんだから、仕方ないだろ?」
「うーん、まあ、そうかもしれないねー。じゃあ、私は昼休みに屋上に行ってみるよ」
「そうか。じゃあ、僕は図書室に行ってみるよ」
一人になれるし。
「りょーかい。それじゃあ、そういうことでー」
「おう、分かった」
*
昼休みになると、彼女は屋上へと向かった。
僕は昼ごはんを食べ終わってから図書室に向かった。
「……さすがに誰もいないか」
人気のない図書室は静かで心地よいのだが、一人くらいはいてほしい。
じゃないと本たちが可哀想だ。
なんてことを考えていると、誰かが図書室にやってきた。
「あっ……」
僕が声のした方を向くと、白髪ショートヘアと黒い瞳と小柄な体型が特徴的な女の子がいた。
「あー、えっと、こ、こんにちは」
「こ、こんにちは」
彼女はそう言うと、僕の横を通り過ぎようとした。
その時、彼女の足がもつれて転びそうになった。
「危ない!」
僕は咄嗟に彼女の体を支えた。
その直後、僕の両腕は一瞬で凍ってしまった。
彼女は僕の両腕が凍ったことに気づくと、泣きながら謝った。
「……! す、すみません! 私、うまく力が制御できなくて! い、今なんとかしますから、じっとしててください!」
僕は彼女が何かする前に、自力でなんとかすることにした。
「これくらい平気だよ。……ほら、この通り」
僕は鬼の力でそれを溶かすと、両手を開いたり閉じたりした。
「い、今のって、鬼の力……ですか? でも、あなたは人間ですよね?」
「え? あー、まあ、祖父が鬼だったから、僕にも少なからず鬼の血が流れてるんだよ」
「そ、そうなんですか……。それは良かったです……って、全然良くないですよね! 初対面の相手をいきなり凍らせるなんて!」
彼女は僕のことを心配してくれているようだが、別に大したことはないから、そこまで必死に謝られても困る。
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。えーっと」
「あっ! 私『雪女 葵』っていいます! 一年生です!」
「えっと、僕は『山本 雅人』。二年生だ」
彼女は僕の名前を聞くと、目をキラキラと輝かせた。
「あ、あの! もしかして! 二年連続で体力テストの記録が測定不可能か無しだったりします?」
「え? あー、まあ、そうだけど」
「そうですか! 先輩があの有名な裏ボスだったんですね!」
裏ボス? 僕にそんな異名があったのか。
知らなかった。
「その名前は初めて聞いたけど、どうして雪女さんはそんなに嬉しそうなの?」
「だって! 見た目からは全くそんなイメージないのに、そんなことできるなんてすごいことじゃないですか!」
「そ、そうかな?」
「そうですよ! もっと自信を持ってください!」
な、なんかグイグイくるな。
まあ、いいけど。
「あ、ああ、うん、そうだね」
それから彼女としばらく話をした後、僕は新しく部を作ることを彼女に話した。
すると、あっさり承諾してくれた。