惚れ角
うう……もう誰とも結婚できない……。医療行為だからってあんなところやこんなところを見られた。いや、診られた。
「……童子。お前には心がないのか?」
「さて、どうでしょうね。そんなことよりいろいろと分かったことがあります」
「今は聞きたくない」
「そうですか。では、先ほど夏樹さんがこっそり撮った写真のデータをネットの海に放流します」
「やめてください」
「では、聞いてください」
「はい」
僕が制服を着ている間、夏樹(僕の実の妹)と座敷童子の童子はその一部始終を瞬き一つせず凝視していた。
「二人とも鼻血出てるぞ?」
「え? あっ、ホントだ。お兄ちゃん、ティッシュ取って」
「私にも一枚ください」
「はいよー」
僕が二人にティッシュを一枚ずつ渡すと彼女たちは鼻血をティッシュに食べさせた。
「ゴミはゴミ箱に捨てろよー」
「あっ、あとで媚薬に……じゃなくて趣味に使うからその必要はないよー」
「奇遇ですね、私もです。まあ、今はそんなことよりも雅人さんの体の方が大事です」
そんなことよりって、お前な……。
「まあ、そうだな。それで? 僕の頭に生えているこの角はいったい何なんだ?」
「一言で言うと、惚れ角です」
「惚れ角? なんだ? それ」
「名前の通りです。あなた以外があなたの角を見ると、あなたのことを好きになってしまいます。ちなみに元から好きだと今まで以上にあなたことを好きになってしまいます」
「え? そうなのか?」
「はい。その証拠に現在私たちの下半身はものすごいことになっています」
「ものすごいこと?」
「えー、あー、その、つまり……び、びしょびしょなんです」
あー、はいはい、そういうことね、完全に理解した。
「あー、なるほど、そういうことか。で? 僕はこれからどうすればいいんだ?」
「私が文字の力でその角を隠すので雅人さんはいつも通り登校してください」
「分かった」




