右目から
帰宅後、僕は夏樹(僕の実の妹)の願いを叶えてやることにした。
「えっと、僕の部屋でやるのか?」
「うん」
「右目と左目、どっちから舐めたいんだ?」
「うーん、じゃあ、右目から」
「分かった。えっと、僕はベッドに横になっていた方がいいのか?」
「うん」
「で、夏樹は僕の上に覆い被さると」
「うん♡」
なんかすっごく嬉しそうだなー。普通なら見ているこっちも嬉しくなってくるんだが、実の兄である僕の眼球をこれから舐めるってことを知ってるからなんか素直に喜べないんだよなー。
「……準備できたぞ」
「う、うん」
なんで緊張してるんだ?
「夏樹」
「ひゃ、ひゃい!」
「肩の力を抜け。魚を目玉を舐めると思えばいいんだよ」
「お兄ちゃんの眼球は魚のよりきれいで栄養価高いよ!」
「え? そうなのか?」
「うん、だから今からそれを舐めると思うとつい緊張しちゃって」
「ダイヤモンドはハンマーで砕ける」
「え?」
「この世に完全なものなんてないんだから、そんなに緊張する必要はないぞ。ほら、ガッといけ。ガッと」
「そ、そんなことできないよー」
「なら、やめるか」
「え?」
「できないことを無理強いしても一生できない。だから、諦めるのも立派な決断だ」
それを聞いた夏樹は首を横に振った。
「私、やるよ。お兄ちゃんに恥をかかせるわけにはいかないから」
いや、別に恥をかくようなことではないと思うのだが。
「そうか。じゃあ、やってくれ」
「うん」
夏樹が僕の目玉を凝視している。夏樹は僕の顔ではなく眼球を見つめている。
うーん、なんというか夏樹の目の中に吸い込まれそうだな。
夏樹の舌先が少し口から出る。うん、きれいな色をしているな。良かった、良かった。
彼女の吐息が僕の目玉付近にかかる。あー、近いなー。近い、近い。近すぎる。目と目でキスしそうだ。
彼女の舌が口から出せるギリギリ手前まで出る。ああ、もうすぐ眼球を舐められてしまう。
夏樹の舌先がピクピクと無意識のうちに動いている。かわいい舌だなー。でも、すごく近くにあるからちょっと怖いな。
夏樹の舌先に透明な液体が少し溜まっている。唾液が目に入ったら痛いのかな? うーん、血よりかはマシだと思うんだけど、どうなのかな?
「お、お兄ちゃん、いくよ」
「ああ、いつでもいいぞ」
「うん。じゃあ、いくよ。せーのっ!」
ペロリ。
「……あ」
「あ?」
「新しい扉が私の前にあるよ」
え?
「お兄ちゃん、この扉開けてもいいのかな?」
「うーんと、それは多分開けちゃダメなやつだと思うから放置でいいと思うぞ」
「そっか。じゃあ、放置しよう。えっと、次は左目だね」
「え? 感想は?」
「あー、うーんとね、よく分からなかったから左目も舐めてから言うね」
「分かった」
こんな兄妹、どこかにいるだろうか。うーん、僕たち以外にいたら関わりたくないなー。




