間違えちゃった☆
朝。
あー、もう朝か。えっと、昨日はたしか夏樹(僕の実の妹)といろいろ話して、それから……どうなったんだっけ?
「……えへへ、お兄ちゃん、大好きー♡」
「……ん?」
僕が目を開けると目の前に夏樹の顔があった。
ち、近い! 寝顔! 寝息! 寝言! というか、身動きが取れない! いったいどうなっているんだ!!
「あー、なるほど。そういうことか」
身動きが取れないといっても目や口は動かせるため周囲がどうなっているのかすぐ分かった。
夏樹の黒い長髪が僕の体をグルグル巻きにしているせいで動けないのだ。
少し力を込めれば脱出できるが、そんなことをしたら夏樹がかわいそうだし髪にダメージを与えることになる。女の命を粗末に扱ってはいけない。まあ、だからといって男の髪を粗末に扱っていいわけではないが。
えーっと、こういう時は……。
「おーい、童子ー。起きてるかー」
「はい、起きていますよ」
どこからともなく現れた座敷童子の童子は今日も真顔だ。
「そうか。それは良かった。すまないが、ちょっと助けてくれないか?」
「別に構いませんが、おはようのキス一回を所望します」
「え? キス?」
「はい。キスです」
「お前、それ最近のブームなのか?」
「いえ、私はいつもキスやらドッキングやら性行為やら子作りのことを考えていますよ?」
どうしてお前はそんな恥ずかしいセリフを真顔で言えるんだ? まあ、いいや。
「そうか。それより早く助けてくれ」
「キース、キース、キース、キース」
あー、面倒だなー。もうー。
「あー! 分かったよ! やるよ! やればいいんだろ! やれば!」
「よろしい。では、目覚めのツボを押します」
「夏樹にか?」
「はい、そうです」
「そうか。変なツボ押すなよ?」
「はい。えいっ……あっ」
え?
「お、おい、今変なツボ押さなかったか?」
「えっと……間違えちゃった☆」
「おいいいいいいいいいいいい!!」




