時計
僕が目を覚ますと僕のとなりにいるはずの妹がいなかった。
上体を起こして周囲を見渡す。部屋には僕の他に誰もいないようだ。
時計に目をやると十一時ちょうどだった。
朝日がカーテンの間から差し込んでくる。
今日は晴れのようだ。
洗濯物、今からでも干そうかな。
僕がそんなことを考えていると、僕のとなりに座敷童子が現れた。
「ようやく起きましたか。休日とはいえ、寝過ぎですよ」
「そうだな。休日とはいえ、寝過ぎだよな」
座敷童子はため息を吐くと、僕の頭を撫でた。
「な、なんだよ」
「いえ、特に意味はありません。気にしないでください」
気にするなと言われると余計に気になるな。
「まあ、とりあえず下に来てください。あなたの妹があなたが来るのを待っていますよ」
「待っている? 今日はなんか特別な日だったか?」
僕がそんなことを言うと、彼女は僕の手首を掴んだ。
「細かいことは気にしないでください。ほら、行きますよ」
「お、おう」
*
「あっ、お兄ちゃん。おはよう」
リビングに行くと、夏樹(妹)が昼食の準備をしていた。
「え? あ、ああ、おはよう。というか、これはいったい何なんだ?」
「え? 何って、昼ごはんを作ってるんだよ」
昼ごはんを夏樹が作っている……だと。
「え、えーっと、料理なんていつ覚えたんだ?」
「え? あー、まあ、お兄ちゃんが作っているところをたまに見てたから、なんとなくできたよ」
なんとなくって……。
天才かよ……。
「そ、そうか。それはすごいな。えっと、その……」
「昨日のことはもう忘れていいよ。私、気にしてないから」
そう言われてな……。
「そ、そうなのか?」
「うん、そうだよ。そんなことより、早く食べようよ。少し早いけど」
なんかすっきりしないな……。
まあ、とりあえず食べてから考えよう。
「そうだな。それじゃあ、いただきます」
「召し上がれ♡」
その様子を横目で見ていた座敷童子の眼差しはなんとなく悲しそうだった。