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万能ではない

 朝ごはんを食べている時、夏樹なつき(妹)はずっと黙っていた。

 原因は完全に僕なのだが、僕の何が妹を怒らせたのかは分からない。

 僕は鬼の力を宿してはいるが、それは万能ではない。世界でたった一人の妹の気持ちを読み取ることもできないのだから。

 彼ははしをテーブルの上に置くと、ゆっくり口を開いた。


「……な、なあ、夏樹なつき


 夏樹なつきはしを動かすのをピタリと止めた。


「……なあに?」


「あー、いや……その……なんというか……」


 何をやっているんだ! 僕は!

 早く用件を言うんだ!


「えっと……その……ど、どうして怒ってるんだ?」


「……別に怒ってなんかないよ」


 いや、完全に怒ってるだろ。


「そ、そうなのか?」


「うん、そうだよ。それより、早く食べないと遅刻しちゃうよ」


 いつもは時間なんて気にしていない妹がそんなことを言った。

 これはもしかして……反抗期……なのか?


「そ、そうだよな。早く食べないといけないよな」


「…………」


 その後、夏樹なつきは何も言わずに朝食を食べ終わった。


「……洗い物。今日は私がやる」


「え? あ、ああ、分かった」


 彼はそう言うと、それから何も言わずに朝食を食べ終えた。


「えっと、じゃあ……いってきます」


「……待って」


 彼女は自分の黒い長髪で彼の体を拘束こうそくした。


「あ、あのー、夏樹なつきさん。これはいったい」


「うるさい。少し黙ってて」


 えー……。


「……ねえ、お兄ちゃん」


「ん? なんだ?」


 彼女はなかば無理やり、彼を座らせる。

 それと同時に彼を解放する。

 彼女は彼を後ろから抱きしめると、彼の耳元でこうささやいた。


「……お兄ちゃんは、私のこと……家族として好きなんだよね?」


「え? あ、ああ、そうだな」


 彼女は下(くちびる)を噛むと、こう言った。


「そっか。分かってたけど、お兄ちゃんにとって私はその程度の存在なんだね」


「えっと、それはいったいどういう……」


 彼女は彼が最後まで言い終わる前に、その場から走り去った。

 二階にある自室まで……。


「な、何だったんだ? 今のは」


「それは今日一日、ゆっくり考えてください」


 音もなく現れた座敷童子は彼にそう言うと、彼のひたいに『出』という文字を書いた。

 その直後、彼は家から追い出された。


「な、何なんだよ……いったい」

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