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サーモグラフィー

 台所に戻ると座敷童子の童子わらこの目が少し赤いことに気づいた。ん? 疲れてるのかな?


「童子、お前なんか目赤いぞ?」


雅人まさとさん、サーモグラフィーって知ってますか?」


「え? あー、なんか体温というか温度を可視化できるっていうやつだろ?」


「はい」


「えっと、つまりあれか? 今のお前の目はまさにそれだと」


「はい。彼女を見失うと厄介なので」


 なるほどなー。というか、透明人間にも体温ってあるんだなー。まあ、僕は何度も彼女に触られてるから分かってたけど。


雅人まさとさん」


「なんだ?」


「目にキスしてもいいですか?」


「え? お前、そういう趣味あるのか?」


「はぁ……私は文字使いですよね?」


「ああ」


「今、私の目が赤いのはそれの影響ですよね?」


「ああ」


「文字の力は文字数やワード数、使う時間が増えると霊力消費量も増えます。しかし、文字使いが文字の力を使っている状態で誰かに粘膜接触するとそれを他人に付与させることができます」


「うん、だから?」


「ですから! いちいち文字を書くのは面倒なのでとっととキスさせろってことです! それともなんですか? 私に犯されたいんですか!」


「ごめん、知ってて煽った」


 それを聞いた童子の顔は真っ赤になった。


「そう、ですか」


「ああ」


「では、少し屈んでください。届かないので」


「ああ」


「では、いきます」


「うん」


「……チュ……チュ」


 彼女は僕の両目にキスをすると、料理を再開した。


「……なあ、童子」


「な、何ですか?」


「誰にも言わないから僕の目を舌で舐めた感想を聞かせてくれないか?」


「嫌です」


「あー、その……僕は約二名に常時監視されてるけど、別に大丈夫だと思うぞ。多分」


「……優しい味がしました」


「え?」


「優しい味がしたと言ったのです! 二度も言わせないでください!」


「ちゃんと聞こえてたよ、どっちも」


「……っ!! へ、へえ、そうですか。まだ耳鼻科に行く必要はないみたいですね」


「そうだな。しばらく病院には行かないだろうな。行くとしても産婦人科だろうな」


「今日の雅人まさとさん、変です!!」


「そうかな? いつも変だと思うけど」


「いつもこんなんじゃありません! いつもあなたのことを見ているのですから間違いありません!」


「へえ、いつも見てるんだー」


「もうー! からかわないでください!」


「はいはい」


 たまに見せる幼い女の子のような仕草や反応は面白い。いやあ、からかい甲斐があるなー。

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