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 そんなわけで透明人間と一緒に過ごすことになった。


「あ、あの……」


「ん? 何?」


 昼休みになると彼女は僕に話しかけてきた。登校し始めてから昼休みになるまでずっと黙っていたからどこかに行っていたのかと思ったが、そうではなかったようだ。


「そ、その……お、お手洗いに行きたいのですが」


「え? あー、なるほど。ん? ちょっと待って。僕、一応男なんだけど」


「はい……」


「僕と一緒じゃないとダメなのかな?」


「誰かに触れていないと追っ手に見つかってしまいます」


「えっと、じゃあ、そのへんの女子生徒に事情を説明して」


「波長が合わないと追っ手に私の居場所がバレてしまいます」


「えーっと、じゃ、じゃあ、女装するよ」


「衣服だけ変えると波長が乱れてしまいます」


「え? そうなの? じゃあ、性転換しようか」


「え?」


「ん? 僕なんか変なこと言ったかな?」


「あー、その……あなたは性転換できるのですか?」


「できるよ。おさん狐の力を使えば」


「は、はぁ……そうですか。では、お願いします」


「分かった。それじゃあ、まずは空き教室に向かおうか」


「はい」


 へえ、なんで空き教室に向かうのか言わなくても分かるのか。

 てっきり「どうしてですか?」って言うと思ってたんだけど。

 僕は彼女の頭の回転の良さに少し驚きつつ空き教室で性転換した。

 狐の力って便利だよなー。服まで変えられるんだから。さて、お花を摘みに行くか。

 僕が空き教室を出るとなぜかりん(狐っ娘)と遭遇してしまった。


「だ、旦那様……どうして女性になっているのですか?」


「あっ、えーっと、こ、これは事故だ。おさん狐の力が暴走したせいでこうなってるんだ」


「そ、そうでしたか。良かったです」


 あ、危ない危ない。もう少しでそういうのに興味がある人なんだと思われてしまうところだった。


「え、えーっと、じゃあ、僕は用があるから失礼するよ」


「旦那様!」


「な、何かな?」


「旦那様、偽名を考えておいた方がいいですよ」


「偽名? あー、この姿になった時の名前か。うーん、そうだなー。じゃあ、雅人まさとから人を取ってみやびにしよう」


みやび……いい名前ですね!」


「そ、そうかな。それじゃあ、僕……いや、私急いでるから」


「あっ、はい! いってらっしゃいませ!」


 彼女はピョンピョン跳ねながら僕に笑顔を向けてくれている。ああ、なんか恥ずかしいな。


「かわいい名前ですね」


「君、性格悪いって言われない?」


「よく言われます」


「そっか」


 僕は彼女と一緒にお花を摘みに行った。音が妙に生々しかったが、平静を装った。

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