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胸騒ぎ

 どうも胸騒ぎがする。またあの合わせ鏡が何かしでかしそうで怖い。

 晩ごはんを食べ終えた僕はみんなに怪しまれないようにそっと自室に向かった。

 まあ、みんなと一瞬目があったから多分みんな気づいている。

 合わせ鏡の前に立つと鏡の中の僕が話しかけてきた。


「お前は今幸せか?」


「あ、ああ、幸せだ」


「本当か?」


「ああ」


「じゃあ、なんでさっさと正妻を決めないんだ? そうすれば今よりずっと楽になれるぞ」


「そんなことしたら選ばれなかった子が悲しい思いをしてしまうじゃないか」


「はぁ……いいか? お前は半分人間半分妖怪、つまり半妖だ。さっさと鬼になればいいのにいつまで経っても半妖のまま。俺が何を言いたいか分かるか?」


「えーっと、早く正妻を誰にするか決めろ?」


「違う。早く鬼になっちまえばいいのに、だ」


 その直後、鏡の中の僕の頭からツノが二本生えた。


「お、お前! まさか!!」


「ああ、そのまさかだよ。俺は最近、鬼になった。そのおかげで人間ではなくなった。妖怪にも色々ときまりはあるが、一夫多妻がダメだなんて俺に直接言っちまったら俺はその日のうちにそいつを殺す。妖怪はやろうと思えば法を無視して生きられるし姿と気配を消しちまえば、あんなことやこんなことも容易にできる。なあ、お前も鬼にならないか? 毎日、あらゆる欲を満たせて気にいらないやつは片っ端から消せる。なあ、さっさと鬼になっちまえよ。メリットしかないんだからさ」


「……断る」


「あぁん?」


「お前はそれでいいかもしれないが、僕はごめんだね。僕は今が一番楽しいんだ。今までも、そしてこれからもきっと僕は中途半端なままなんだろうけど、それでも僕は精一杯生きていくよ。優柔不断だとかヘタレだとかクズとか言われても僕は僕のままであり続ける! だから、僕はお前のようにはならない!」


「あー、そうかよ。あー、萎えたわー。今日はあいつとやるかー」


「待てよ」


「なんだよ」


「お前の初めての相手は誰だ?」


「それ、俺が言わなくても分かってるだろ?」


「いいから答えろ」


「はぁ……お前のだーいすきな妹だよ。これで満足か?」


「ありがとう。やっぱりお前も夏樹なつきのこと大好きなんだな」


「ち、違う! 俺の近くには手頃ですぐやらせてくれそうで不器用な俺でも相手をしてくれそうで童貞大歓迎でそこそこかわいくてなんとなく信頼できるやつがそいつしかいなかったんだよ! だから、別に俺はあいつのことなんかなんとも思って」


「はいはい、もういいよ。じゃあな、僕」


「あ? ああ、じゃあな、俺」


 鏡の中の僕はそう言うとブツブツと何かをつぶやきながら消えていった。

 鬼……か。やっぱりいつかなってしまうのかな。

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