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うるさい、黙れ
町中にたくさんいる雅人さんもどきを合わせ鏡の中に文字の力で『吸引』した後、私は文字の力で『奴隷』にした雅人さんを彼の部屋にあるベッドの上に押し倒した。
いつもなら少し照れつつ私とおしゃべりしてくれるのに今回はそれがない。
あー、そうか。奴隷にしてしまったから私が命令してくれないと何もしてくれないんだ。
それに気づいた私は文字の力を解除した。
「あれ? 僕は今まで何を……」
「雅人さん」
「え? ちょ、なんで僕お前に押し倒されてるんだ!? というか、事後じゃないよな!? なあ!」
「大丈夫です。奴隷になったあなたからは一切魅力を感じられませんでしたから」
「えっと、僕今ディスられたのか? それとも」
座敷童子の童子は僕をギュッと抱きしめる。
「ごめんなさい。もう二度とあなたを奴隷にはしません。あなたはあなたのままでいてください」
奴隷には……か。
「お前って本当面倒な性格してるよな。独占欲強いくせにそれだと僕が僕じゃなくなるから放置してる」
「うるさい、黙れ」
「はいはい」
僕は彼女の涙で服が濡れていくのを感じながら彼女を優しく抱きしめた。
 




