えんらえんらと子泣き爺の力
囮になった僕が侵入者に襲われたのは作戦を決行してから数分経った頃だった。
僕は徳島県代表の『子泣き爺』の力を使って石になり侵入者に誘拐されないようにした。
侵入者があたふたしているうちに座敷童子の童子が文字の力を使って侵入者を『拘束』した。
作戦成功。だが、まだ誘拐されたみんなの居場所を吐かせていない。
僕は石になった状態でそいつの首を掴んだ。
「お前、『えんらえんら』だな? 夏樹たちをどこに隠した! 言え!!」
「やめて! 気安く私に触らないで!」
「あれ? お前、女なのか?」
えんらえんらの体は煙でできているため見た目で性別を判断するのは難しい。
「そうよ! 悪い?」
「いや、別に悪くないけど」
「なら、さっさと手を離してよ!」
「え? あ、ああ」
僕が手を離すと彼女はその場に座った。
「雅人さん、彼女は男性が苦手なようです。しばらく席を外してください」
「え? あ、ああ、分かった」
僕がその場からいなくなると童子は彼女と話し始めた。それから数分後、童子は彼女をお札の中に封印してから僕の元にやってきた。
「お前、封印したのか?」
「彼女は色々と危険なので封印しました。これから妖怪警察に行ってきます」
「そ、そうか。あっ、夏樹たちの居場所は」
「あなたの部屋のベッドの中です」
「はぁ? なんでそんなところに」
「彼女はあなたに成りすまして、みなさんを襲おうとしていました。まあ、要するにレズビアンなのですよ、彼女は」
「あー、なるほど。うん、分かった」
「はぁ……まさか空気と同化して結界を抜けるとは敵ながらあっぱれですね。では、いってきます」
童子はそう言うと一瞬で僕の前からいなくなった。幸い、みんなは僕のベッドの中でスウスウと寝息を立てていた。
あー、良かった。みんな無事で。けど、空気と同化できるっていうのは結構ズルい能力だなー。




