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あまめはぎと輪入道の力

 私は頭にきのこが数個生えている小柄なおじさんときのこ製の駒で勝負をしました。結果は……。


「あちゃー、負けちゃいましたー。伝説のきのこ、欲しかったですー。まあ、負けは負けですからね。では、私はこれで」


「待て」


 おじさんがそう言うと公園を封鎖するように大きなきのこがたくさん生えました。


「お前は勝負に負けた。足の皮をもらおう」


「は、はぁ!? あ、足の皮って……本気ですか?」


「俺は本気だ。さぁ、早く寄越せ。子どもの足の皮はいい感じにジメジメしてるからおいしいんだ。さぁ、さぁ!!」


 なるほど。これは最初から私の足の皮を狙っていたんですね。


「私の体は旦那様のものです! 今すぐこの場から立ち去りなさい!」


「うるせえ! さっさと足の皮を寄越せ!」


「やれやれ、たまにいるんだよなー。堂々と悪いことをしている妖怪」


「だ、誰だ!」


 聞き覚えのある声、間違いないこの声は!


りん、無事か?」


「だ、旦那様!」


「なっ! よ、よくも俺のきのこを!」


 全身に炎を身にまとった旦那様はそれが生やしたきのこたちをいい感じに焼いてしまいました。


「お前、『あまめはぎ』だな? 今はまだ秋じゃないぞ。とっとと山に帰れ」


「うるせえ! うるせえ! 秋じゃなくてもきのこは生えるんだよ! これでもくらえ!!」


 それが体から胞子を撒き散らしましたが、燃えている旦那様には効いていません。


「今なんかしたか?」


「く、くそ! なら、この子娘に種菌を植え付けてやる!」


「そうはさせるか!」


 旦那様は牛車ぎっしゃの車輪になるとゴロゴロ転がり始めました。ちなみにそれには火がついています。


「なっ! く、来るなー!」


 それは車輪になった旦那様から逃げていますが足が遅いせいで旦那様は普通に転がっているだけで追いつけます。


「じゃあ、もうこの町には来るな!」


「わ、分かった! 約束する! だから、許してくれ!」


「よし、分かった」


 旦那様は人の姿に戻りましたが、まだ燃えています。


「何してる? ほら、とっととこの町から出ていけ!」


「は、はいー! なーんてな!」


 それは私に向けて種菌を投げました。私は狐火を投げてそれを燃やしました。


「いい加減に……しなさーい!!」


 私は巨大な狐火をそれに向けて放ちました。


「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 それは火だるまになってしまいましたが、妖怪なので問題ありません。それはピョンピョン跳ねながらこの町から出ていきました。


りん、大丈夫か?」


「は、はい。ですが、今ので力を使い果たしてしまいました。旦那様、その……」


「分かってるよ。おんぶすればいいんだろ?」


「は、はい、よろしくお願いします」


「うーん、でもちょっと待っててくれ。もうすぐ夏樹なつきが来ると思うから」


「お兄ちゃーん! 大丈夫ー?」


「おっ、噂をすれば」


 私はそのあと、気を失ってしまったのでこれは家に帰ってから聞いた話です。

 どうやら旦那様は一人で下校している私のことが心配で部活を途中で抜けてきたようです。

 走るより京都府代表の『輪入道』の力を借りた方がいいかもしれないと思った旦那様は路地裏で服を脱ぎ夏樹なつきさんにそれを預けたそうです。服を脱いだ理由は輪入道が燃えているからです。

 今回は相性も良く、そんなに強い妖怪ではなかったためなんとかなりましたが、もし旦那様が助けに来てくれなかったらと思うと今でもゾッとします。


「おはよう、りん。気分はどうだ?」


 旦那様の膝枕は最高です。毎日してもらいたいです。


「だ、大丈夫です! 今日は本当にありがとうございました!」


「いや、別にお礼を言われるようなことはやってないよ。それよりあいつに変なことされなかったか?」


「あー、いえ、特に何も」


「そうか。なら、良かった。てっきり、きのこの養分になってるかと思ったよ」


「わ、私はそんなに弱くありません!」


「でも、少し怯えてたぞ」


「うっ! そ、それは……」


「ごめんな、怖い思いさせて」


「い、いえ! 今回の事件はどう考えても私のせいです!」


「いや、そもそも凛を一人で下校させた僕が悪い。ごめんな」


「そ、そんなことないです!」


「いいや、そんなことある」


「そんなことないですってばー!」


 その日の夜、私たちは何度も謝罪し合いました。なんだか新婚夫婦になったような気がして楽しかったです。

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