伝説のきのこ
放課後、旦那様と夏樹(旦那様の実の妹)さんは部活をしに行ってしまいました。
部活が終わるまで待っていても良かったのですが、私は先に帰ることにしました。
これからお話しするのは下校中に体験したものです。
「お嬢ちゃん、今帰りかい?」
「え? あー、はい」
頭に小さなきのこが数個生えている小柄なおじさんが私に話しかけてきました。
「お嬢ちゃんは中学生かな?」
「いえ、高校生です」
「高校生? 最近の高校生は小学生並みの身長なんだねー」
「女の子の身長と体重と年齢のことについて言うのは失礼なので覚えておいた方がいいですよ」
「ありがとう、覚えておくよ。ところでお嬢ちゃんは駒回しをしたことはあるかい?」
「はい、あります」
「じゃあ、おじさんと勝負しようよ」
「勝負?」
「ああ、もし勝てたら伝説のきのこをあげるよ」
「伝説のきのこ、ですか?」
「ああ、そうだよー。食べると大人になれるきのこだよー」
お、大人に……!
「なるほど。分かりました。私、やります」
「よおし、じゃあ近くの公園まで行こうか。ところでお嬢ちゃん、名前は?」
「凛です」
「そうか。凛ちゃんか、いい名前だねー」
*
凛(狐っ娘)、一人で帰れるかなー? 心配だなー。
「二人とももう帰っていいわよ」
「え? いや、でも」
「二人のおかげで予定より早く依頼を達成できたから大満足よ。というか、雅人。あんた、さっきから凛ちゃんのことばかり考えてたでしょ?」
「え? あー、まあ、そうだな」
「だと思った。あの子、しっかりしてるように見えるけど、まだまだ子どもなんだから目を離しちゃダメよ」
「そ、そうだな。悪い、みんな。じゃあ、また明日な」
「ええ、また明日」
俺の幼馴染である『百々目鬼 羅々』がそう言うと僕と夏樹は凛(狐っ娘)を追いかけるように走り始めた。




