大好きです
僕が自室のベッドに横になると僕のワイシャツを着た座敷童子の童子が布団から顔を出した。
「お、お前! いつからそこに!!」
「大きな声を出すと切り落としますよ?」
「どこを!?」
「第三の足を」
「勘弁してくれ。僕にできる範囲でなら、なんでもするから」
「では、私を抱いてください」
「却下」
「嘘つき」
「あのさー、お前たしか僕のこと諦めたよな?」
「一度は諦めかけました。しかし、今日の料理対決を見てあなたのとなりにいていいのは私だけだと思いました」
ええ……。
「なので文字の力を使って、お二人に媚薬を飲ませました」
「うわあ、あれお前の仕業だったのか。うわあ」
「好きな人を独り占めしたいと思うのはダメですか?」
「いや、思うのは別にいいけど」
「思っているだけでは何も変わりません!」
「お、おう、そうだな」
あー、めんどうだなー。早く寝たいなー。
「雅人さん、お願いします。私を食べてください」
「無理。おやすみなさい」
「そうですか。そうですよね。一生幼女体型の私が迫っても興奮しませんよね。分かりました。自分でやります」
「おい、こら、ちょっと待て」
「おや? その気になったのですか?」
「いや、全然」
「そうですか……」
「残念そうな顔するなよ。はぁ……お前なら僕のクローンとか作れるだろ」
「クローンは嫌です。体外受精も嫌です。私は雅人さんと愛し合って私の中で子どもを身籠りたいのです」
あれ? なんか思ってたのと違うな。単に僕とやりたいだけなのかと思ってた。
「もっといい相手が……」
「いません! あなた以外、虫以下です!」
なぜそうなる。
「僕みたいな半端者よりもっといい人が」
「興味ありません!」
ええ……。
「僕、まだ学生なんだけど」
「構いません。あなたが卒業するまで育児は私と家の者でやりますから」
座敷童子ってみんなこんな感じなのかな?
「そうか。準備はもう整ってるんだな」
「はい。なので、早く私と」
「おやすみ」
「なぜですか! 何が不満なんですか!」
「お前に不満はないよ。僕に不満があるからしたくないんだよ」
「あなたの中にいる鬼のことですね」
「ああ、そうだ。あいつが僕の中にいる限り、僕はそういうことはしたくない。だから」
「分かりました。おやすみなさい」
「あー、うん、おやすみ」
「……雅人さん」
「ん? なんだ?」
「大好きです」
彼女は僕の首筋にキスをすると、僕をギュッと抱きしめた。
僕は彼女の頭を撫でるとゆっくり目を閉じた。




