お兄ちゃんのことを知らないメス
料理対決が終わった後、私は凛ちゃん(狐っ娘)とお風呂に入った。
「凛ちゃん」
「何ですかー?」
「凛ちゃんはお兄ちゃんのどういうところが好きなの?」
「え? あー、そうですねー。こう、視界に入れているだけで幸せにしてくれるところとか、近くにいると胸がキュッとなってそのあと私と旦那様しかいない世界に連れていってくれるところとか、ついつい触れたくなるようなオーラみたいなものを放っているところとか、私個人を見てくれているところとか、私と真剣に向き合ってくれるところとかが好きです」
「へえ、そうなんだー。というかさー、お兄ちゃんのことを知らないメスってかわいそうだよねー」
「あー、分かりますー。旦那様と出会ってからお父様のことが時計にしか見えなくなりましたから」
「時計?」
「時計は時計でも鳩時計です。時間になったらポッーポッーって鳴くんですけど、それまではほとんどしゃべらないというか死んでいるというか」
「あー、そういうことかー。まあ、お兄ちゃん特有のオーラというか、なんというかこう女の子の部屋にダイレクトにくるトキメキというかそういうのが他の人にはないよね?」
「そうですねー。あんな感覚、今まで感じたことありませんよー。何なんですかねー? あれ」
「お兄ちゃんのことずーっと見てきてるけど、今までよく分からないんだよねー。フェロモンかなーって思ってるだけど、生まれた時から常時出し続けてるからねー」
「生まれた時からですか!? それはすごいですねー。あっ、そういえば旦那様って半妖ですよね?」
「お兄ちゃんはそこらにいる半妖よりすごいよー。お兄ちゃんの体の中にいるのは鬼だからねー。タフさと霊力の量半端ないよー」
「でしょうねー。稲荷様もかなり怯えていましたから」
「え? 稲荷様も怯えてたの?」
「はい、怯えていました。いつもより少し早口になっていましたから」
「へえ、そうなんだー。いやあ、やっぱりお兄ちゃんってすごいなー」
「ですねー」
 




