デザート
料理対決なのに僕はまだ審査できていない。二人が作った料理に不満があるわけではないが、食べたら食べたで問題になりそうなものしか作っていないからだ。二人とも最後くらいいいところを見せてくれ。
「さぁ! 最後のお題は!」
目目連たちが空中で『デザート』と書く。
「やはりデザートだああああああああああああ!!」
「童子、今日テンション高いな」
「私は仕事をしているだけです。本当はすっごく嫌です。吐き気がします」
「そうなのか」
「はい……。ところで雅人さんなら何を作りますか?」
「え? あー、うーん、そうだなー。プリンとかクッキーかな。そこそこ簡単だから」
「そうですか。まあ、私ならギモーブにしますね」
「食感が内蔵みたいっていうアレか?」
「はい! アレです!」
「うん、まあ、知らないやつにならあげてもいいと思うぞ」
「雅人さん以外に渡すつもりはありませんよ?」
「そうか……」
「さぁ、両者ともにメモを取り終えました! おおーっと! 両者ともにパイ投げを始めました! ついに料理する気が失せたのでしょうか!」
あらかじめ冷蔵庫で冷やしておいたパイを取り出した二人は負の感情をパイに込めて相手に投げつけている。
「いや、違う。一見、殺意を込めて投げているように見えますが、協力してデザートを作っています。あっ、チョコレートで文字やイラストをかいていますよ」
「な、なんということでしょう! 協力して料理を作っています! こんな展開、いったい誰が予想できたでしょうか! さぁ! デコレーションは終わりました! 腕やら体液やらは一切混入していません! 安心して召し上がってください!」
「お兄ちゃん」
「旦那様」
「私を……食べて♡」
「私を……食べてください♡」
えーっと、どうしてこうなった? 二人ともすごく頑張ってるだけど、そんなこと言われたら食べにくいじゃないか。
「じゃ、じゃあ、いただきます」
「あんっ♡」
「へ、変な声出すな!」
「ごめんね、お兄ちゃん。でも、くすぐったくて、つい」
「そ、そうか」
なるほど。これが夏樹(僕の実の妹)の味か。この味を出すのはプロでも難しい。これが愛の力なのか?
「うまい」
「……!!」
「出ました! 雅人さんのうまい! この一言を聞くと一ヶ月飲まず食わずでも生きられるそうです!」
「夏樹」
「ひゃ、ひゃい!!」
「よく、頑張ったな」
「お、お兄ちゃん」
「これからもこの調子で頑張ってくれ」
「う、うん!」
「やはり妹は強い! しかし、まだ終わっていません! さぁ、お次は凛さんの料理です!」
「いただきます」
「ど、どうぞ。くっ! ううっ!」
「……凛は敏感なんだな」
「嫌いに、なりましたか?」
「ううん、そんなことないよ」
「そう、ですか」
「ああ」
ふむ。凛(狐っ娘)のはアレだな。優しい味がするな。誰のために作ったのかヒシヒシと伝わってくる。まだ幼いのによくぞここまで。
「うまい」
「……!!」
「本日二回目のうまい! いただきましたー!! いやあ、まさか一日のうちに二回も聞けるとは思っていませんでした!!」
「凛」
「は、はい!」
「いい、お嫁さんになれるよ」
「そ、そんな! 私なんてまだまだですよー」
「いや、事実だ。お前の料理を食べてる時、お前が僕のために愛情を込めながら丁寧に作っている様が目に浮かんできたから」
「だ、旦那様」
「これからもこの調子で頑張ってほしい。以上だ」
「ありがとうございます! ありがとうございます! 私! 頑張ります!」
二人ともよく、頑張ったな。
「えー、結果が気になると思いますが、ここで一旦CMです」
 




