小狐
夏樹(僕の実の妹)が目を覚ます。
夏樹は僕のとなりで寝ている小狐を見た瞬間、小狐に襲いかかった。
「この泥棒狐!! ついに本性を現したな!!」
「ま、待て! 夏樹!! 凛は別に何も悪いことはしていない!!」
「だとしても! 私は私からお兄ちゃんを奪おうとする存在を許さない!!」
「やめろ! 凛はお前と同じくらい僕のことを愛してくれているんだ! というか、その気があるなら僕はとっくに凛のものになっているはずだ! そうだろう?」
「あー、まあ、そう、だね。ごめんなさい、お兄ちゃん。私、ついカッとなって」
「いいんだよ。分かってくれれば」
「う、うーん……旦那様ー、おはようございますー」
「おー、凛、おはよう」
「……おはようございます。旦那様、私を抱っこしてください」
「え? なんでだ?」
「えっと、その……久しぶりに狐の姿になったせいでまともに歩けないからです」
「そっか。それなら仕方ないな」
僕が彼女を抱きあげると彼女は幸せそうな笑みを浮かべた。
「あー、旦那様の体温が心地いいですー」
「そうか? 今の凛の方があったかそうだが」
「そんなことないですよー。あー、幸せー」
「あ、あはは、やっぱり殺した方がいいかなー?」
「夏樹、落ち着け。あっ、そうだ。僕の着替えが終わるまで凛を預けてもいいか?」
「え? あー、うん、別にいいけど」
「ありがとう。じゃあ、頼んだぞ」
お兄ちゃんは自分の部屋で着替えを始めた。
私の部屋で着替えればいいのに。
うーん、この子からは悪意を感じないなー。今のところは。
私が小狐の頭を撫でると小狐は嬉しそうにシッポを振った。
な、なあんだ、普通にかわいいじゃん。
 




