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きせいじじつ

 深夜……。


「……様……旦那様……」


 この声は……りん(狐っ娘)か?

 僕が目を開けると、ベビードールを着た凛が目に入った。


「ん? え? は?」


「あ、あまりジロジロ見ないでください。これ着るの結構恥ずかしかったんですから」


 いや、顔が真っ赤になるくらい恥ずかしいのなら最初から着なければいいじゃないか。


「旦那様……わ、私と一緒に……ね、寝てください」


 これって夜這い、なのかな?

 いや、でも僕たちはまだ結婚していない。

 そういうことをするのはまだ早い。


「それはお前の本心か?」


「え?」


「お前は自分より家のことを優先しがちだからな。凛、無理してるのなら別に……」


「む、無理なんかしてません! 旦那様に対する気持ちは本物です!」


 本物……か。


「じゃあ、僕が今すぐ脱げと言ったら言う通りにするのか?」


「だ、旦那様がそれを望むのでしたら……」


 彼女は肩にあるヒモに指をかける。僕は彼女の手を握ってそれを止めさせる。


「お前は何か勘違いしているようだな。夫婦に主従関係は必要ないんだよ」


「で、ですが、狐の一族は昔からこうして殿方に」


「凛、お前は狐の一族である前に一人の女の子だ。狐の一族のしきたりなんてどうでもいい。そんなものは無視しろ。なあ、凛。家の繁栄がお前の望みなのか? お前はそれで幸せになれるのか?」


「わ、分かりません。私が知っているのはほとんど家のことですから」


「そうか。なら、今日はもう寝ろ」


「あ、あの、旦那様」


「なんだ?」


「きせいじじつって何ですか?」


 どこでそんな言葉を覚えたんだ?


「実家の両親に帰省しろって言われた時、帰省した事実をあとで職場の人に伝える時に使う言葉だ」


 ……嘘つき。

 でも、今のはいい嘘です。私にとっては。


「そう、ですか。えっと、一緒に寝てもいいですか?」


「三人はさすがにきついと思うぞ」


「大丈夫です。私、狐の姿になりますから」


「そうか。じゃあ、好きにしろ」


「はい、そうします」


 彼女はそう言うと狐になった。

 うわあ、なんかもふもふした生き物が布団の中に入ってきた。


「おやすみなさい、旦那様」


「あ、ああ、おやすみ」


 旦那様、もしかして動揺しているのでしょうか?

 うーん、試しに抱きついてみましょう。


「旦那様」


「な、なんだ?」


「抱きしめてもいいですか?」


「え? あ、ああ、別に構わないぞ」


「ありがとうございます。では、失礼します」


 うおっ! こ、これはすごい! すっごく気持ちいい感触だ!!


 旦那様の心臓の音、いつもより大きくなってます。ふふふふ、旦那様は狐の姿の方が興奮するのですね。

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