表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
607/1936

女難

 で。


「えーっと、今日から旦那様と同棲することになったりんです! どうぞよろしくお願いします!」


「うん、まあ、そういうことだ」


「また……メス!!」


 夏樹なつき(僕の実の妹)が彼女に襲いかかる。


「夏樹! 頼むから落ち着いてくれ! この子に危害を加えたら大変なことになるんだ!!」


 僕が夏樹の目の前に立ち塞がると、夏樹は黒い長髪を触手のようにしならせながら僕の両肩に手を置いた。


「このガキはお兄ちゃんの何なの?」


「あー、えーっと、その……お嫁さん候補、かな?」


「旦那様! 私はいつでもとつげますよ!」


「嫁ぐだとおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


「夏樹! 落ち着け! 僕はこの子のことなんとも思ってないから!!」


「そ、そんな! 旦那様、それは困ります!!」


「えっと、ちょっと黙っててくれないかな? 夏樹を落ち着かせないといけないから」


「分かりました! 旦那様の言う通りにします!」


 はぁ……なんというか、今回はかなり修羅場ってるなー。


「あいつ、嫌い! 今すぐ殺す!」


「まあ、待て。これはおままごとだ。子どものお遊戯だ。ごっこ遊びみたいなものだ」


「ごっこ、遊び?」


「ああ、そうだとも。じゃなきゃ、幼女と結婚なんてできるわけないだろ?」


「むー! 私は子どもじゃありません!」


「バカ! 今、そんなこと言ったら!!」


「そう……。へえ、そうなんだ……。じゃあ、今すぐ殺しちゃってもいいよね?」


「な、夏樹! 今のはお前を挑発するためのものであって本心じゃない! だから、とりあえず」


「夏樹さん! 旦那様が困っています! 今すぐおとなしくしてください!!」


「お前の……お前の……。お前の血は何色だああああああああああああああああああああああああ!!」


「凛! 逃げろ!! 殺されるぞ!!」


「死ね! クソガキいいいいいいいいいいい!!」


 凛はキッとした目つきで手を合わせる。


稲荷いなり様、稲荷様。少しだけ力をお貸しください。いなり、こいこい。こんこんこん!!」


 凛がそう言うと凛のひたいに三つ目の目が浮かび上がった。

 それが開眼した瞬間、夏樹は僕のところまで吹っ飛んだ。


「小娘が。あまり調子に乗るな」


「り、凛……お前」


 夏樹は凛の目力(?)で気絶している。

 凛は僕の顔を見るなり、両手を広げた。


「こちらに来い。凛の婿よ」


「嫌だ、と言ったら?」


「その娘を殺す。もしくはそれ以上のことをする」


「へえ、稲荷様って案外嫉妬深いんですね」


「我は少しの間だけ凛に力を貸している。それに我にそう言ってほしいと言ったのは凛だ」


「そうですか。えっと、それで僕は何をしたらいいんですか?」


「凛を抱きしめてやれ。凛はお前のことを愛している。しかし、その愛はあまりにも重い。だから、嫉妬深いのだ」


 なるほど。そういうことか。

 僕は夏樹を座敷童子の童子わらこに預けると凛のところまで歩いた。


「分かりました。ほら、凛。これで満足か?」


「旦那様の体、あったかーい♡」


 彼女はそう言うと、寝息を立て始めた。

 はぁ……こういうのを女難って言うのかなー?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ