フシャー!
放課後。僕は幼馴染の『百々目鬼 羅々』と一緒に下校した。
僕が家の鍵を開けて家の中に入ると、珍しく妹が玄関にいた。
僕が妹の存在に気づくと、妹は涙を流しながら僕に抱きついた。
「夏樹、どうしたんだ? 何かあったのか?」
妹はガタガタと体を震わせながら、廊下を指差す。
僕がそちらに目をやると、ガサガサと蠢く黒い何かがいた。
なるほど。そういうことか。
たしかに一人でいる時に『アレ』を目にしたら、びっくりするよな。
「安心しろ、夏樹。すぐ片付けてやる」
僕は鬼の力の一つである『威圧』を使って、それの動きを封じた。
その後、目にも留まらぬ速さでそれの元へ行くと、それを握り潰す仕草をした。
すると、それはペシャンコになってしまった。
僕が紙を小さく折り畳むように、それを折り畳む仕草をすると、それは小さく折り畳まれた。
僕がそれを掴んで外に投げる仕草をすると、それは猛スピードで遥か彼方に飛ばされてしまった。
「はい、完了。夏樹、終わったぞー」
僕がそう言うと、妹は僕の胸に飛び込んできた。
「おー、よしよし、怖かったなー」
僕が優しく妹の頭を撫でていると、羅々は苦笑しながら、こちらにやってきた。
「夏樹ちゃんは相変わらず、お兄ちゃんっ子なんだねー」
彼女がそう言うと、妹は彼女を睨みながら猫のように威嚇した。
「あはははは、やっぱり私のこと嫌いなんだね。まあ、そう警戒しないでよ。話が終わったら、すぐ帰るからさ」
彼女がそう言うと、妹は僕の背後から彼女を凝視し始めた。
妹は昔から彼女のことが嫌いである。
理由は分からないが、とにかく彼女のことを嫌っている。
何かに対して嫉妬の念を抱いているのだろうか? まあ、別に今は深く考える必要はないだろう。
「よし、それじゃあ、まずは話とやらを聞かせてもらえないか?」
「うん、いいよ。じゃあ、リビングにゴー!」
彼女がそう言うと、僕たちはリビングに向かった。
*
「で? いったいどんな部を作るつもりなんだ?」
「えーっとねー、表向きはボランティア活動中心だけど、裏では悪の組織やテロリストたちと戦う……みたいなのをやりたい!」
なるほど。つまり、ヒーローになりたいんだな。
「そういうのは警察に任せた方がいいんじゃないのか? というか、学生がそこまでやる必要あるのか?」
「私はね、雅人が自分の力を活かせる部を作りたいの。それに雅人が鬼の力を思う存分使えるような部を作れば……」
「つまり、お前が必要なのは僕じゃなくて、僕の鬼の力ってことだな?」
「えっ? いや、別にそういう意味じゃ……」
「……知ってるよ、お前は昔から僕の鬼の力なんか関係なく接してくれたからな。けど……やるからには部員は最低でも五人は必要だ。だから……」
僕が最後まで言い終わる前に、彼女は僕に抱きつく。
「ありがとう! 雅人! 雅人のそういうところ大好きだよー!」
「あっ! こら! 過度なスキンシップはやめろ! 夏樹が嫉妬するから!」
「え? あー、そうだったね。ごめんね、夏樹ちゃん」
「フシャー!」
再び彼女を威嚇した妹は僕の元にやってくると、ニコニコ笑いながら僕の胸に頬をスリスリと擦りつけた。