屋上とは
「おかしいわねー。あんたはあの山から出られないはずなのにー」
「今回は特別です。それより、早く私の前から消えてください。目障りです」
鬼姫(雅人の体を借りている)は小首を傾げると、彼女にこう言った。
「どうして、あたしがそんなことしないといけないのー? というか、あんたがあたしの前からいなくなればいいと思うんだけどー?」
「相変わらず生意気なんですね、あの頃と全く変わっていません」
彼女はどこからともなくクナイを三本取り出すと、それらを鬼姫に向かって投げた。
「そうかしら? あたしって、そんなに若く見えるー?」
それらを華麗に躱す鬼姫。
「いいえ、全く。これっぽっちも」
「あっ、そう。じゃあ、そろそろ消えてよ。こんなところであたしたちが戦ったら、学校吹っ飛んじゃうわよ?」
彼女はどこからともなくクナイを六本取り出すと、それらを鬼姫に向かって投げた。
「安心してください。そうなる前に倒しますから」
それらを鮮やかに弾く鬼姫。
「やれるものならやってみなさいよ。木葉」
「望むところです」
二人が本格的に戦闘を始めようとした時、葵(雪女)が二人の間に割って入った。
「お二人とも! もうやめてください! 屋上はケンカをするための場所ではありません!!」
「じゃあ、何をする場所なの?」
鬼姫の唐突な質問に対し、彼女は即座に返答できなかった。
「……うーん、まあ、休憩所かな。多分、違うと思うけど」
雅人の幼馴染である『百々目鬼 羅々』がそう言うと、葵はそれを肯定した。
「そ、そうですね! そうかもしれませんね!」
「いえ、訓練場としても使えます」
木葉が静かにそう言うと、鬼姫はそれを否定した。
「はぁ? こんなところで訓練? 狭すぎるでしょ」
「いえ、むしろ好都合です。狭い場所で戦えるようにしておくことも重要ですから」
一瞬の沈黙が流れた。
「戦闘狂」
「殺人鬼」
二人の殺気がぶつかりそうになった時、葵は二人を凍らせた。
「だーかーらー! すぐにケンカを始めようとしないでください!!」
二人が動けるようになったのは昼休みが終わる五分前だったらしい。