ふええええ!
結婚式前夜。
私は旦那様の布団に潜り込みました。
「旦那様」
「んー? あー、君かー。どうしたんだ? 眠れないのか?」
「いえ、その……わ、私と……そ、その……い、いけないことしませんか?」
「え? いや、今睡魔に襲われてるから今日はもう無理かなー。ふわぁ」
「そ、そうですか」
うちは昔から夫婦になるまではお互い赤の他人だから肉体関係を持つことはあまり好ましくないという風習があります。
ま、まあ、たしかに夫婦になったら毎日一緒にお風呂に入ったり、毎日そういうことをしても大丈夫ですね。
けれど、私はそうなる前にしてみたいのです!
お父様やお母様に何度質問しても子どもの作り方を教えてくれませんでしたから。
ですが、旦那様なら知っているはずです!
だって、この家の外から来た人なのですから!
「だ、旦那様」
「んー?」
「わ、私を……女にしてください」
この子はいったい何を言ってるんだ?
深夜テンションでおかしくなってるのか?
ど、どうしよう! 言っちゃった! 言っちゃったよ! こ、これから私、何をされるんだろう。
「何言ってるんだ? 君はこの世に生を受けた時からずっと女じゃないか」
「え? あー、その……そういうことじゃなくてですね」
「君が僕に何を求めているのかは、まあだいたい分かってるつもりだ。けど、それは必ずしも僕じゃなきゃダメなのか? そういうことをしたいのなら、誰かを誘拐すればいいんじゃないか。君が僕にしたように」
ち、違う。私はそんなことしない。私はそんなクズじゃない!
誰でもいいだなんて思ってない!
あれ? でも、本当にそうなのかな?
私、本当は誰でもいいじゃ……。
「まあ、とにかくこの話はもう終わりだ。明日は結婚式なんだから早く寝ないと明日辛いぞ」
「は、はい……分かり、ました」
ああ、いけない。
このままだと私……この人を食べてしまう。
行き場のない性欲が私の耳元で「襲え!」と囁いてきます。
やめて! やめてよ! 私を狂わせないで! 早くどこかに行ってよ!
誰か……誰か私を助けて……。
「なあ」
「は、はい、何でしょうか?」
「さっきから苦しそうにしてるけど、大丈夫か?」
「え? い、いえ、別に私は苦しんでなんか」
「嘘つき。そんな悪い子にはこうだ」
「ふ、ふええええ!」
だ、旦那様が私を抱きしめてる!?
ど、どうしていきなりこんなことを!?
「だ、旦那様」
「何も言うな。早く寝ろ」
「し、しかし」
「……勘違いするな。これは君のためにやったんじゃない。妹を寝かしつける時にやっていたことをやっているだけだ」
「そ、そうなのですか?」
「ああ、そうだ」
まあ、今でもたまにやってるんだけどな。
「そう、ですか。旦那様って妹さんのこと大好きなんですね」
「ああ、好きだ。大好きだ。妹さえいれば僕は生きていける」
「大袈裟ですねー」
「いや、事実なんだが」
「へえ」
でも、妹さんの気持ち少しだけ分かるような気がします。
旦那様に抱きしめられていると、とっても落ち着きます。ああ、いつまでもこうしていたいなー。
「まったく、君は本当に……あれ? 寝ちゃったのか? やれやれ、やっと寝られるな。それじゃあ、おやすみ」




