旋風
「離せ! 鬼姫! 僕はただ! 僕の妹を侮辱したこいつを」
「こいつを……どうするの? まさか殺そうだなんて考えてないわよね?」
殺す? 誰が誰を殺すんだ?
「そ……それは……」
「少し頭を冷やしなさい。じゃないと、あたしみたいに戻れなくなるわよ?」
戻れなくなる?
それはどこからだ? いや、言われなくても分かる。誰かを手にかけたら、その前に戻ることはできないという意味だよな。
「そう……だな。そうだよな。ありがとう、鬼姫。お前がいなかったら、僕は今頃」
「あー、そういうのやめて。感謝されるのは嫌いじゃないけど、あんまり慣れてないから」
誰かに感謝されたことがあんまりないから、照れくさいって意味かな?
「そうか……。でも、サンキューな」
「ふ、ふん! 今度は助けてあげないからね! じゃあね!!」
彼女はそう言うと、彼の体の中に戻っていった。
「すまなかったな、羅々。マジギレしちまって」
「ううん、私の方こそごめんね。少し言い過ぎちゃって」
二人がケンカを始める前に仲裁してくれた鬼姫に大感謝。
「えっと、部活の活動内容を少し変えるっていうところまでは良かったよな?」
「そうだね。私たちができることをやっていけばいいし、自分たちから厄介事に首を突っ込んでいく必要はないからね」
厄介事か……。
これからも鉄鼠のようなやつが現れるかもしれないけど、その時はできるだけ穏便に事を運んで。
「まあ、厄介事の方からやってくるかもしれないけどねー」
「おい、やめろよー。妙なフラグ立てるなよー」
その時、旋風が彼の頬を掠めた。
「……やっと……見つけました」
おい……今のは何だ?
今、何が起こった?
わけが……分からない……。
彼がそれに目を向けた時、彼は鬼姫の精神と半ば強制的に入れ替わった。