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童子とデート

 今日は座敷童子の童子わらことデートをする。

 待ち合わせ場所は指定されていない。

 つまり一緒に家を出るという行為がデートの始まりであり一緒に家に帰るという行為がデートの終わりである。


「童子、準備できたか?」


「はい、できました。では、いってきますのキスをしましょう」


「うん……え? いってきますのキス?」


 僕がキョトンとしていると彼女はため息をいた。


「これからデートが始まるんですから、それくらい普通にやってください」


「いや、別にしなくてもいいと思うんだけど」


「あなたは本当に乙女心が分かっていませんね。私はあなたにキスをしてほしいのです!」


「どこにだ?」


「え?」


「どこにして欲しいんだ?」


「そ、それは……」


 彼女が目を逸らすと同時に僕は彼女の目線までしゃがんだ。


「童子、教えてくれ。何事も始めが肝心だろ?」


「う、うう……そ、そうですね。え、えっと、ほ、頬にしてほしい、です」


「そっか。分かった。じゃあ、するぞ」


「は、はい、お願いします」


 僕が童子の頬にキスをすると彼女は顔を真っ赤にした。


「なんだよ、もしかして照れてるのか?」


「て、照れてません! ほら、早く行きますよ!」


「おいおい、僕はまだお前にキスをされてないぞ」


 玄関と外を隔てている扉のノブに手をかけている童子は赤面したまま振り返ると僕の頬に優しくキスをした。


「こ、これで満足ですか?」


「ああ」


「そうですか。では、行きましょうか」


「ああ。あっ、そうだ。なあ、童子」


「何ですか?」


「その……やっぱり手をつないだ方がいいんじゃないんか? せっかくのデートなんだし」


「……私の手はあなたより小さいです。なので」


「そんなの知ってるよ。まあ、お前がどうしても無理だって言うのなら僕はお前の言う通りにするよ」


「あ、あなたは本当にズルい人ですね。そんなこと言われたらもっと好きになってしまいます」


 私は雅人まさとさんに聞こえないように小声でそう言いました。


「童子ー。おーい、大丈夫かー?」


「は、はい、大丈夫です。え、えっと、じゃあ手を出してください」


「ああ」


 僕が手を出すと彼女はその手をギュッと握った。


「では、行きましょうか」


「おう」


 僕たちは一緒に扉を開けた。

 さぁ、デートの始まりだ!

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