説得
「二人とも、とりあえず落ち着けよ」
僕がそう言うと、二人はゆっくりと頷いた。
「よし、じゃあ、とりあえず二人はお互いの顔を見るな。面と向かって自分の気持ちを相手に曝け出してるから、殺し合いに発展しそうになってるんだろ?」
『それは……まあ……そう……かな……』
二人はゆっくりと立ち上がると、お互いの顔が見えないように背中合わせになった。
その後、スッとその場に座った。
よし、これでなんとか、まともに話ができるな。
「えっと、まあ、鬼姫は僕の相棒というか、体の一部みたいなものだから、僕が死ぬまでこの世に存在し続ける。まあ、正しくは僕の子どもが生まれるまでは……だけどな」
「え? じゃあ、雅人の子どもが生まれたら、雅人は普通の人間になれるの?」
おい、羅々。今のはスルーしろよ。
まあ、ツッコミたくなる気持ちは分からなくはないが。
「まあ、そうだな。なあ? 鬼姫」
「ええ、そうよ。まあ、それがいつになるのかは分からないけどね」
上から目線やめろ。
殺し合いに発展しそうになるから。
「はぁ……まあ、あれだ。こいつとは長い付き合いになるから、みんなもそのつもりでいてくれよ?」
「みんなは良くても、私は一生、こいつのこと嫌いでいられる自信があるよ」
だからさ、何でお前はそこまで鬼姫に対して敵意を剥き出しにするんだよ。
「奇遇ね、あたしもよ」
二人は「ふん!」と言うと、スッと立ち上がった。
鬼姫は僕の体の中に隠れると、愚痴を言い始めた。
「えーっと……まあ、あれだ。あんまり気乗りしないかもしれないけど、あれであいつは可愛いところもあるんだよ。だから……その……」
「殺し合うな……でしょ?」
心を読まれた?
いや、それはないか。
「ま、まあ、そういうことだ」
「分かったよ。雅人がそう言うのなら、私はそうするよ」
彼女はそう言うと、手招きをした。
「ん? なんだ?」
僕が彼女に近づくと、彼女は僕の額にデコピンをした。
「な、何すんだよ!」
「別に。ただちょっとムカついただけ」
な、なんだよ、それ……。
そんな感じで二人が殺し合いを始めるのを阻止することに成功した。