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試作品3号救出作戦

 次の日、日本に台風が上陸した。

 台風が台風になるまでの過程をすっ飛ばして、いきなり現れ日本に上陸した。

 ただし、それによる被害はほとんどなかった。

 少し風が強いなーとか小雨が降る程度だった。

 まるで寝ぼけているかのようにフラフラと移動しているそれはなんとなく僕たちが住んでいる町を目指していた。


「な、なあ、ひーちゃん」


「なんだ?」


「これ、どう思う?」


 ソファに座って一緒にテレビを見ている試作品1号こと、ひーちゃん(人造妖怪)は腕を組んだ状態でこう言った。


「おそらく、試作品3号だろうな。なんとなくだが、助けを求めているような気がする」


「助け?」


「おそらく風のように自由に放浪していたら、いつしか風と一体になってしまったのだろう。だが、妹はそれを知らずに私たちの元へ向かっている」


「えっと、つまり望んでそうなったわけじゃないけど今のままだと苦しいから助けてほしい。そういうことか?」


「まあ、そんなところだろうな。よし、では準備を始めようか」


「準備?」


「ああ、試作品3号救出作戦の準備だ」


 彼女が指をパチンと鳴らすと試作品2号、試作品4号、試作品5号が彼女の目の前にやってきた。


「妹たちよ! 今こそ力を合わせる時だ! さぁ、私と一つになるがいい!」


「やだ。でも、ご主人様とならいつでもいいよ」


 試作品2号こと、ふーちゃん(人造妖怪)はそう言いながら僕の膝の上に座った。


「お姉様、この家のあるじであるお兄様の意見を聞かずに行動するのはいけないと思います。ねえ? お兄様」


 試作品4号こと、よーちゃん(人造妖怪)はそう言いながら僕の腕にしがみついた。


「お姉ちゃんの気持ちはよく分かったけど、お兄ちゃんの気持ちが分からないからしたくない」


 試作品5号こと、いっちゃん(人造妖怪)はそう言いながら僕の両肩に手を置いた。


「ま、雅人まさとよ、いつのまに妹たちのハートを射抜いていたのだ?」


「別に射抜いた覚えはないよ。気づいたらなんとなくそうなってただけだよ」


「はぁ……そうか。お前たちにとって私はどうでもいい存在なのだな」


 ひーちゃん(人造妖怪)からネガティブオーラが出ている。

 それに気づいた僕は彼女の頭を優しく撫でた。


「そんなことないよ。もしそうなら、ひーちゃんが指を鳴らしても秒で来たりしないよ」


雅人まさと……」


 ネガティブオーラが消滅した瞬間、ひーちゃんからポジティブオーラが出始めた。


雅人まさとよ! 私は妹を助けたい! お前はどうだ?」


「僕も同じ気持ちだよ。もしあれが夏樹なつきだったら僕は秒で助けに行っているから」


「よし! では、準備が終わり次第、即出発しよう!」


『おー!!』


 こうして僕たちは試作品3号を助けに行くことになったのである。

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