試作品5号
昼休み……屋上……。
光あるところに闇あり……か。
今朝、ひーちゃん(人造妖怪)が言っていたことがどうも頭から離れない。
嫌な予感がする。何の根拠もないけど、こうなんとなく良くないことが起きそうな気がする。
僕が暗雲を見つめていると、暗雲の中から黒い物体が現れた。
それは球の形をしていたが、次第に栗のイガのようなものが生えてきた。
その後、風船が膨らむように肥大化すると、パンッと破裂した。
その中から現れたのは黒髪ツインテールと紅い瞳と全身を覆っている黒いローブが特徴的な美少女……いや美幼女だった。
その子は僕と目が合った瞬間、僕に襲いかかった。
「ちょ、君はいったい何者だ! 何が目的でこんなことを」
「うるさい! お前はお姉ちゃんから光を奪った! そのせいで光と闇のバランスが崩れた! だから、私はお前を殺さなければならない!」
お姉ちゃんから光を奪った?
光と闇のバランスが崩れた?
もしかすると、これはよーちゃん(人造妖怪)絡みのことなのか?
「もしかすると君は闇を司る人造妖怪なのか?」
「そうだ! 私は人造妖怪、その試作品5号だ!」
「なるほど。まあ、とにかく少し話をしようよ、いっちゃん」
「へ、変な名前をつけるな! この半端者!」
「おいおい、初対面でそんなこと言うなよー。というか、それはたしか禁句だぞ。早く取り消さないと大変なことに……」
僕が最後まで言い終わる前に屋上にやってきたのは夏樹(僕の実の妹)だった。
「だーれーだー。お兄ちゃんのことを『半端者』と言ったやつはー」
ああ、ダメだ。もう間に合わない。
いっちゃん、死ぬなよ。




