お兄様
試作品4号こと、よーちゃん(人造妖怪)は晩ごはんを食べている僕のことをじーっと見つめている。
僕の顔は特に面白くもなんともないと思うのだが。
それは僕がお風呂に入っている時もそうだった。
普通に体を洗って普通に湯船に浸かって普通に体をバスタオルで拭いて普通に髪を乾かす。
たったそれだけのことなのに、彼女はずっと僕のことを見つめていた。
自室のベッドに横になった時、さすがに無視できなくなった僕は彼女にこう訊ねた。
「なあ、よーちゃん。どうしてずっと僕のことを見つめているんだ?」
彼女はニコニコ笑いながらこう答えた。
「お兄様のことが好きになったからです。けれど、その好きが本物かどうかまだよく分からないのでお兄様のどんなところを好きになったのかをはっきりさせるためにこうして観察しているのです」
お前がお兄様になり監視が観察になった。
ふむ、まあそれは悪くない。けど……。
「今のよーちゃんに見られるのは別に不快じゃないけど、そのよーちゃんに殺意の念を送っている夏樹の視線が気になるから夏樹に気づかれないようにしてくれると助かる」
「分かりました。明日からそうします。では、お兄様。おやすみのキスをしてください」
「え? キス? えっと、それはどこにすればいいんだ?」
「お兄様がしたいと思う場所でいいですよー」
彼女はずっとニコニコ笑っている。
本当に嬉しそうだ。
僕は彼女の耳元で「おやすみ」と言ってから彼女の額にキスをした。
彼女は数秒間、金色の光を体から放出した。
そのあと、なぜか彼女は気絶してしまった。
えっと、今のは僕のせい、なのかな? まあ、そうなるよな。
よし、次からは頬にしよう。




