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素のそれ

 登校中……。


「お姉さんはねー、本当はみんなと仲良くしたいんだよー。でも、お姉さんが強すぎるせいで怖がられてねー、なかなか友達ができなかったんだー。どれくらい強いのかというと日本にいる神様たちがたばになってもかなわないくらい強いよー」


「へえ」


 夏樹なつき雅人まさとの実の妹)ちゃん、まーだ警戒してるみたいだねー。


「でもね、そんなあたしに挑んできたやつがいたの」


「それって童子わらこちゃんのこと?」


「そうそう! あのちんちくりんでいつも無表情でコケシみたいな座敷童子!! えっと、たしかあの子のお母さんがなんか攻撃してきたから反撃したんだよ。そしたら、なんかあのちんちくりんが怒って文字の力であたしに攻撃してきたの。そんなに強くなかったけど、どこからともなく現れた忍者がそいつに助太刀してなんか妙な技を使って私の魂と肉体を切り離したんだよ。いやあ、あの時は焦ったなー。まあ、肉体なんてただのうつわだから体が軽くなってラッキーだったよ」


「へえ」


「えっと、あたしの肉体は近くの山の上にある神社にあって魂は雅人こいつの祖先に代々受け継がれてるの。どう? お姉さんのこともっと知りたくなった?」


「ううん、全然」


「そう。でも、名前だけでも覚えておいてほしいなー。お姉さんの名前は鬼姫きき。鬼のお姫様って意味だよ。とってもかわいい名前でしょ?」


「私の名前の方がかわいい」


「えー? そうかなー? まあ、たしかにかわいいよねー、夏樹なつきって。あっ、そろそろ学校に着くね。それじゃあ、まったねー!」


 鬼姫ききはそう言うとお兄ちゃんに体を返した。なんだろう、あいつはよくないもののはずなのに完全によくないものじゃないって思ってる自分がいる。

 ダメダメ! あいつは鬼。騙されるな! 私!

 あいつは悪だ! 悪いものだ! この世にいちゃいけない存在だ! しっかりしろ! 私!


「なあ、夏樹なつき


「な、なあにお兄ちゃん」


「あいつ、本当はすっごく寂しがり屋で繊細なやつなのに大きな力を持ってるせいでみんなから誤解されてると思うんだ。なあ、夏樹なつきはどう思う?」


「分からないし分かりたくもないよ。けど、完全に悪いやつじゃないと思う。だって、私に話をしている時のあいつの笑顔は……」


「演技じゃなくて素のそれだった」


「うん」


「なあんだ、あいつのことちゃんと見てるじゃないか。素直じゃないなー」


「わ、私にはお兄ちゃんがいれば、それでいいもん! はい! この話はもうおしまい!!」


「はいはい」


 お兄ちゃんは自教室に着くまでずっとニコニコしていた。

 間違いなくお兄ちゃんの笑顔なのに、なんとなくあいつの笑顔を見ているような気分になった。

 やっぱり私、あいつ嫌い。

 ズルい、ズルいよ、お姉さん。

 次会ったら絶対一発ぶん殴ってやる。

 鬼のお姫様だからって容赦なんてしてやらないんだから。

 私はそんなことを考えながら自分の席に座った。

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