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最悪な災厄

 座敷童子の童子わらこの視線が気になる。

 朝ごはんを食べている時、歯を磨いている時、顔を洗っている時……。

 童子はじーっと僕のことを見つめている。

 いったい僕が何をしたというんだ?


「なあ、童子」


「何ですか?」


「僕、お前に何かしたか?」


「いえ、別に何も」


「じゃあ、なんでずっと僕のことを監視してるんだ?」


「監視?」


 おいおい、まさかただ見ていただけなんじゃないだろうな。

 もしそうなら僕が他人の視線に敏感なやつってだけになるぞ?

 いやいや、そんなことはない。僕の視界にいつもお前がいるんだから気にならない方がおかしい。


「別に監視しているつもりはありませんよ。私はあなたのことが心配なのです」


「心配?」


「なぜ心配されているのか分からない。そんな顔をしていますね」


「え? あー、まあ、そうだな」


 彼女はリビングにあるソファに座ると手招きをした。

 なんだ? となりに座ればいいのか?

 僕がソファに座ると彼女は僕の膝の上に座った。

 あのー、なんで向かい合ってるんですかねー。

 それだと話しづらくないか?

 ほら、お互いの吐息がさ……。


「今朝、私はあなたとキスをしました」


「お、おう」


「その時、私はあなたの中にいる彼女がずっと眠っていることに気づきました」


「彼女? もしかして鬼姫ききのことか?」


「はい、そうです。彼女がいるせいであなたは鬼の力に常時侵食されています。ですが、今はそれがほとんどありません。なぜなら、あの鬼の力はあなたが取り込んだ妖怪たちの力のおかげでかなり浄化されたからです」


 え、えっと、体にいいものを取り込んだから悪いものがかなり浄化されたってことかな?


「へえ、そうなのか」


「ですが、問題が一つあります。それは……」


「その鬼が例の妖怪たちの力を取り込んでそういう風に見えるようにしているかもしれない……でしょ?」


「はい、その通りです」


 やはりそうでしたか。おかしいと思いましたよ。

 だって、あなたがずっとおとなしくしていることなんて今まで一度もなかったのですから。


「久しぶり。元気にしてた?」


「ええ。それより早く雅人まさとさんに体を返してあげてください。雅人まさとさんはこれから学校に行かなければならないのです」


「学校ねー。あっ、そうだ。今日はこいつの代わりにあたしが……」


 目の前にいるちんちくりんがあたしの首をガシッとつかむ。

 まあ、あたしの体じゃないんだけどね。


「やめてください」


「あたしがあんたの言うことを聞くと思う?」


「お願いします。あなたは存在そのものが災厄なんです。最悪な災厄なんです」


「ひどいなー。あたしってそんなに悪いことしたかなー?」


「私はあなたのそういうところが嫌いです」


「ふーん、そう。まあ、今回は少し体を動かしたかったから出てきただけなんだけどね。大丈夫、大丈夫。学校の門をくぐったらちゃんと体返すから」


「約束ですよ?」


「鬼と約束してもいいことなんてないわよ。それじゃあ、いってきまーす」


 彼女はそう言うとスキップしながら家を出ていきました。

 何事もなければいいのですが……。

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