黒子
晩ごはんやら入浴やらを済ませてから自室に行くと座敷童子の童子が僕のベッドの上に座っていた。
「な、なんだよ」
「雅人さん、体の調子はどうですか?」
「え? あー、うーん、いつも通り、かな?」
「そうですか」
彼女はスッと立ち上がると僕の目の前までやってきた。
「雅人さん、後ろを向いてください。あと上だけでいいので服を脱いでください」
「な、なんで僕がそんなことを……」
「早くしてください」
「……はい」
彼女の目は真剣だった。
てっきり僕にイタズラするのかと思っていたが、そうではないみたいだ。
僕は彼女の言う通りにした。
彼女は数秒間、僕の背中をじっと見つめていた。
「もういいですよ」
「お、おう」
僕は彼女の方に目を向ける。
相変わらず彼女は幼い。
僕よりずっと長い時を生きているというのに。
「なんですか?」
「え? いや、別に何も。で、何か分かったのか?」
「え? あー、はい。えー、まあ、あなたの背中には黒子のようなものが四十七個あります」
「あー、やっぱりか」
「はい。ですが、それは体にうまく力が定着したという証なので放置しておいても問題ありません」
「そうか。なら、良かった。じゃあ、おやすみ」
「話はまだ終わっていません」
「そうなのか?」
「はい。問題はあなたが力に使われないように気をつけなければならないということです」
「うーん、それは明日でいいんじゃないんか?」
「まあ、そうですね。では、今日は私と一緒に寝てください。念のため」
「念のため、ね」
「はい」
何かされるような気がしてならない。が、僕の体や力について一番考えてくれているのは彼女だ。
こういう時、襲われたことはない。まあ、僕の記憶が正しければだが……。
「じゃあ、頼む」
「はい、分かりました」
こうして僕たちは一緒のベッドで寝た。
いつもより熟睡できたような気がする。




