有能
家に戻るとそこには家がなかった。
家だけがどこかにワープしたような感じだ。
何かのアニメで家が宇宙に行けるようになる時代が来てなんちゃらかんちゃらみたいなのがあったような気がする。
まあ、そんな感じで僕の家もきっと宇宙に……ってそんなことあるかーい!
さて、どうしたものかな……いや、待てよ。
あの座敷童子が……童子がそんなことをするか?
うーん、だとしたらこれは……。
「お、お兄ちゃん、家が……」
「いや、ちゃんとあるよ。これは多分、天狗の隠れ蓑みたいなもので家を見えなくしてるんだよ」
「そ、そうなの?」
「おそらくな。よし、じゃあ実験してみようか。夏樹、お前の髪を本来ならそこにあるはずの家の扉まで伸ばしてくれないか?」
「え? あー、うん」
夏樹(僕の実の妹)が僕の言った通りのことをすると彼女は何かに気づいた。
「ある……見えないけど、ちゃんとあるよ」
「そうか。なら、良かった。おーい、童子ー。いったい何のためにこんなことをしたんだー?」
僕が彼女にそう言うと彼女は僕の目の前に現れた。
「セキュリティを少し強化しただけです。最近物騒ですから。あと、これは光学迷彩というものです。まあ、それだけだと不安なので少しだけ天狗の隠れ蓑の力も使っていますが」
「そっか、そっか。やっぱりお前の仕業か。というか、最近そんなに物騒なのか?」
「どこかの誰かさんが雲外鏡と接触したせいで性転換した話がありましてね」
あっ、いや、あれは……うーんと、あれは雲外鏡のせいじゃなくて僕が夏樹と姉妹になれたらどうなるんだろうなー的なことを考えたせいでそうなったんだよ、うん。
「あ、あはははは、そういえばそんな話があったな。えっと、それでこれは常時発動しないといけないのか?」
「今日中に、この家に危害を加えようとする者以外は見えるように設定しておきます。さぁ、早く中へ」
「お、おう」
童子って本当有能だよなー。




