雷獣拳
普段はビクビクしている悪魔が急に告白してきて、そのあと暴れ出したらどうする?
「どけ! ブラコン! お前じゃ話にならない!」
「黙れ! 泥棒猫! 今すぐ地獄に落ちろ!」
そんな感じで夏樹(僕の実の妹)と竹刀(凶暴化している悪魔)さんはケンカをしている。
早く止めるべきなのだろうが、どうも止めにくい。
それに彼女がなぜ僕に告白したのかも分からない。
よし、とりあえず夏樹をおとなしくさせよう。
「夏樹」
「なに!」
うわ、完全に怒ってるな。
けど、夏樹をどうにかできる存在はこの場には僕しかいない。
僕がちゃんとしないとダメだ。
「これは僕の依頼だ。お前は少し下がってろ」
「でも!」
「でも、じゃない。お前の気持ちもお前の行動の意味も分かってはいるが、それで事がややこしくなってるのも事実だ。だから、少し落ち着け」
「……分かった。でも、お兄ちゃんが危なくなったらすぐ助けるからね」
「うん、その時はよろしく頼むよ」
夏樹が僕の後ろに移動すると、僕は竹刀さんの方に目を向けた。
「それで? 僕は君を倒せばいいのかな?」
「ケッ……ケケケ……倒す? このあたしをか? お前にそんなことができるのか? 半端者のお前に」
「半端者だからこそできることがあるんだよ。それに僕はいつも一人じゃないんだよ」
「はぁ? お前いったい何を言って……」
僕は彼女の目の前まで一瞬で移動すると、栃木県代表の雷獣の力を借りた。
僕はその力を拳に込めると彼女のみぞおちを殴った。
「『雷獣拳』!!」
「……カハッ!」
彼女は再び教室の後ろにあるミニ黒板まで吹っ飛んだ。
彼女の意識はしばらく戻らなかった。
かなり手加減したのだが……。
仕方ない。少し霊力を分けてやろう。
今日中に解決しておきたいから。
 




