もう一人の私
珍しい。
僕のところに依頼が来た。
『百鬼雪天神部』という主にボランティア活動をしている部活の部員である僕のところに直接依頼が来るのは珍しい。
だいたい他の部員が解決しているが、今回は僕じゃないとダメらしい。
依頼人の名前は『反転 竹刀』。
悪魔らしいが性格は天使。というか常に怯えている。本当に悪魔なのだろうか?
朝のホームルームが始まる前に僕の教室にやってきて相談したいことがあるが詳しいことは昼休みに放課後この教室で話したいとのことだった。
特に用事はなかったため僕は依頼を受けることにした。
その後、あっという間に放課後になった。
「あ、あの……その……じ、実は私……」
『実は私は』というアニメがあってだな。
うん、まあ、どうでもいいな。
「あ、あなたのことが……好き、なんです」
「……え?」
『山本 雅人』。彼女いない歴=年齢の男子高校生。
そんな僕にもついに春が……。
「で、ですから私と……私と付き合ってください!」
「ちょっと待ったあああああああああああああああああああああああああ!!」
「え!? ちょ、な、夏樹!? どうしてここに!?」
夏樹(僕の実の妹)はドスドスと大きな足音を立てながら教室に入ってくる。
彼女は僕たちの間にある机を手でドンと叩いた。
「お兄ちゃんは私のお兄ちゃんなんだよ? それなのに私に隠れて告白とはいい度胸してるねー」
「や、山本さん……いえ、夏樹さんには関係ないです! じゃ、邪魔しないでください!」
「邪魔だと? いい加減にしやがれ! この泥棒猫! 今すぐ八つ裂きにしてやろうか!」
「夏樹、少し落ち着けよ。まだ話は終わってないんだからさ」
僕が彼女の頭を優しく撫でると彼女は僕の膝の上に座りながら頬を緩ませた。
「そうだねー。お兄ちゃんの言う通りだよー」
「な、夏樹さんって、家でもこんな感じなんですか?」
「え? まあ、そうだな。よーしよし」
「えへへへへ、お兄ちゃーん♡」
う、うわあ、ぶ、ブラコンだ……。
「えっと、それでなんだっけ? 僕は告白の返事をすればいいのかな? それとも……君の中にいるもう一人の君と話せばいいのかな?」
「……私の秘密を瞬時に見抜くとは、さすがですね」
「僕は全然すごくないよ。僕よりすごい人のおかげだよ。で? 僕は何をすればいいのかな?」
「えっと、その……もう一人の私をボコボコにしてほしいんです。二度と私の体を乗っ取らないように」
「ふーん……で? ゴングはもう鳴ってるのかな?」
「そんなの……ここに来た時から鳴りっぱなしだぜえええええ!!」
彼女が僕の顔面を殴ろうとすると、夏樹の黒い長髪が彼女の顔面を殴った。
彼女は教室の後ろにあるミニ黒板まで吹っ飛ばされた。
「ようやく本性を現しやがったな! この泥棒猫!」
「ケッ……ケケケ、なかなかいい攻撃だったぜ。けど、そんなんじゃ、あたしを倒せないぜ?」
はぁ……なんとなく予想してたけど、やっぱりこうなるのか。はぁ……。




