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コネコネ

 夏樹なつき(僕の実の妹)の部屋に向かうと彼女はまだベッドの上で寝ていた。

 スウスウと寝息を立てている。とても静かな呼吸だ。うん、かわいい。彼女が妹じゃなかったとしても僕はきっとそう思う。

 まあ、今の僕は彼女の兄ではなく姉なのだが。


「夏樹、朝だぞー」


「……え? もう、朝なの? ふわああああ……おはよう、お兄ちゃ……ん?」


 彼女は異変に気づく。

 自分のそばに立っているのが兄ではなく見知らぬ女だということに気づく。

 彼女は少し警戒していたが、鼻をヒクヒクと動かして今の僕は僕であって僕ではないということに気づいた。


「お兄ちゃん、だよね?」


「うん、まあ、一応」


「な、なんで? どうして? その……お、女の子になってるの?」


「うーん、なんか僕がそう願ったから僕の中にいる妖怪の力がそれを叶えてくれたらしいんだ」


 願った? 叶えてくれた?

 女の子になりたいってこと?


「まあ、おそらく僕がお前の兄じゃなくて姉だったら姉妹になってただろうなーって思ったから、こんなことになったんだろうなー」


「お兄ちゃん、朝からそんなこと考えてたの? 私、嫌だよ。お兄ちゃんはお兄ちゃんじゃなきゃ」


「うん、僕もそう思う。上半身が男の時より重いし、なんか異様にムチムチしてるし」


 お兄ちゃん、それは私より胸があるからだよ。

 いいなー、少し分けてほしいなー。


「お兄ちゃん」


「ん? なんだ?」


「その……少し揉んでもいい?」


「え? どこをだ?」


「えっと、その……む、胸を」


「え? ああ、いいぞ」


 うーん、私よりあるなー。

 お兄ちゃんがお姉ちゃんになると、こうなるのかー。

 うーん、なんだろう。全然興奮しない。

 なんかパン生地をコネコネしてる時みたいな気分になるなー。


「夏樹」


「な、何?」


「あんまり触らないでくれ、なんかくすぐったいから」


「あー、ごめん」


 なんでだろう、妹に胸を揉まれてもちっとも興奮しない。

 胸は一応、性感帯なんだが。


「お兄ちゃんはいつお兄ちゃんに戻るの?」


「それは分からない。あと数秒後に戻るかもしれないし、ずっと戻らないかもしれない。まあ、後者はきっとない。そんなことになったら戸籍を書き直さないといけなくなるから」


「あー、そっか。そうだね。えっと、早く戻れるといいね」


「ああ、まったくだ」


 なんとなくお兄ちゃんの面影はあるけど、やっぱりお兄ちゃんはお兄ちゃんがいい。

 私にとっての一番はお兄ちゃんが私のお兄ちゃんでいる時だもん。

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