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体育館裏

 夏樹なつき(僕の実の妹)は僕の体の中に自分の髪を入れている。

 それは夏樹と離れていても生きている。

 それは僕の行動を全て夏樹に伝える。

 だから、僕がどこにいようと夏樹には全てお見通しなのだ。

 別にそれが嫌だというわけではないが、そこまでして僕のことを知りたいのか? とたまに疑問に思う。

 まあ、好意がないよりかはマシだが。

 放課後、僕が自教室の窓から校門の方に目をやると夏樹がいないことに気づいた。

 いつもなら、校門の近くに立って僕が来るのを待っているはずなのに。

 なんか前にもこんなことがあったな。

 あの時はたしか『髪切り』とかいう妖怪が夏樹を誘拐して放送室に立てこもっていたな。

 さて、どうしたものかな。

 僕が自教室を出ようとした時、僕の体の中にある夏樹の髪が僕の右腕のすじをつついた。


「もしかして夏樹が今どこにいるのか知っているのか?」


 それは再び僕の右腕のすじをつついた。

 今のは肯定かな?


「なあ、夏樹は今どこにいるんだ?」


 それは僕の右腕から出ると同時に僕の血で『たいいくかんのうら』と書いた。

 なるほど。夏樹は今そこにいるのか。

 僕は体育館裏まで走った。

 夏樹のためなら、きっとどこまでだって走れる。

 だって、この世に一人しかいない僕の妹なのだから。


「夏樹!」


「お、お兄ちゃん!」


「は!? ちょ、なんでお前がここに!! えーい! どうでもいい! やっちまえー!」


『おー!』


「邪魔だ! どけ!!」


『ぐあああああああああああああああ!!』


 ガラの悪い連中が夏樹を取り囲んでいたため、僕はとりあえず全員ぶっ飛ばした。


「夏樹! 無事か!」


「う、うん……ありがとう、お兄ちゃん……怖かった、怖かったよー!」


 僕の胸の中で泣いている夏樹はかすかに震えていた。

 僕の気を引くためにやったのかと思ったが、どうもそうではないみたいだ。

 夏樹がかわいいのは認めるが、どうしてこう集団で取り囲むんだろうな。

 一人ずつなら可能性があるかもしれないのに。

 まあ、単に夏樹のことが気に食わなかったからそんなことをしたのかもしれないな。

 事情はよく分からなかったが、僕は夏樹をおんぶすると家まで連れて帰った。

 夏樹の髪が僕の体内になければ夏樹はどうなっていただろう。

 夏樹なら自力でなんとかできそうだが、恐怖を感じている状態では動きはにぶくなってしまう。

 まあ、とにかく無事で良かった。

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