支配願望
昼休み……屋上。
「雅人よ、まずは私の話を聞いてくれ」
「ああ、いいぞ」
「ありがとう、ではさっそく」
試作品1号こと、ひーちゃんは僕に自分の夢を語り始めた。
「私は自分がどこで生まれたのかも親が誰なのかも知らないが、妹が複数いるということと日常生活に使えそうな知識と人造妖怪についての情報しか頭になかった。運良く妹の一人に巡り会えたが、雅人のような霊力がたくさんある者のそばにいないと生きられない。けれど、そんな私にも夢がある。それは……」
「それは?」
「……誰かを支配したいのだ」
ん? それって、つまり……。
「お前、それってつまり……」
「雅人よ、今私は雅人に寄生している。まあ、ハリガネムシのようなものだ」
「一応、言っておくが僕はカマキリじゃないぞ」
「それは知っている。だが、寄生できるということは誰かを操ることができるということだろう?」
「ま、まあ、できなくはないと思うけど」
「だろう? ということで、おとなしく私に支配されてくれ」
は? 普通に嫌なんだが。
「うーん、やだ」
「なぜだ! 理由を言え!」
「いや、だって僕の体で悪いことをしたら僕が悪いことになるし、それに……」
「それに?」
「僕の中にある複数の力をお前が制御できるわけがないんだよ」
「ま、まあ、そこはなんとか制御してだな」
「無理だ。ずーっと内臓をカンディルに食われているような感じなんだぞ? そんなの体験したくないだろ?」
「あー、それは嫌だな。では、他の生物で試そう」
「そうしてもらえると助かる」
ひーちゃんの夢が叶う日は来るのだろうか?
まあ、きっとその日はやってくる。
ひーちゃんに支配願望がある限り。
 




