505/1936
いらっしゃい♡
風呂に入る前……。
「お兄ちゃん、これって……」
「ああ、『僕のベッドを温めておいてもいい券』だ」
「そ、そんな貴重なものもらっていいの!」
「ああ、いいぞ」
「本当に!? やったー! ああ、お兄ちゃんの血のにおいがするー。私のために血で書いてくれたんだー。お兄ちゃん、分かってるねー」
「え? ま、まあな」
まあ、赤いボールペンのインクが切れてただけなんだがな。
「ということで、僕は今から風呂に入ってきます」
「はーい! りょーかーい!」
ということがあった。
で、今に至る。
「夏樹ー、いるかー?」
僕が自室の扉を開けると夏樹(僕の実の妹)の黒い長髪が僕を拘束してベッドの中まで引きずり込んだ。
「いらっしゃい♡」
「お、おう」
「あー、風呂上がりのお兄ちゃんのにおいだー。あー、好きー。幸せー。もう死んでもいい」
「いやいや、死んじゃダメだろ」
「それくらい幸せってことだよ♡」
「そうか」
今日はなんかいつも以上に甘えてくるな。
どうしてこんなに機嫌がいいんだろう。




