パワフル
暗いというより薄暗いな。
たまに火の玉が飛んでいたり、いかにも出てきそうな場所から幽霊が出てくる。
特殊メイクでなんとか怖くしようとしているが怖がらせるのを楽しんでいるように見えるため、別に怖くはない。
本当の恐怖というものは突然、何の前触れもなくやってくる。
まあ、これは遊園地のアトラクションの一つ。
別にそこまで恐怖を与えなくてもいい。
少し肝を試す感じでいいのだ。
『お化け屋敷』なのだから。
「ふーちゃん、どうだ? 怖いか?」
「うーん、そんなに怖くないかな。狭いカプセルの中にいた時の方が怖かった。私、このまま一生ここから出られないのかもしれないって思ってたから」
「そうか。たしかに、それは辛いな」
「でも、おかげでご主人様と出会えたから今ではそんなに辛くなくなったよ」
「そっか……そうだよな。僕と出会えたから、ふーちゃんは自由に動けるようになったもんな」
ふーちゃんは人造妖怪。
土蜘蛛の動力源。
僕たちが助けていなければ今頃……。
そう思うと、ふーちゃんの手の温もりが愛おしくなる。
「ふーちゃん」
「なあに?」
「何があっても、僕はふーちゃんを見捨てたりしないよ」
「ご主人様、それ私のこと口説いてるの?」
「ちっ、違うよ! 今のは別にそんなんじゃ」
「ご主人様! そろそろ出口だよ! ほら! 早く行こう!」
「え? あ、ああ」
今日のふーちゃんはとってもパワフルだなー。
まあ、元気なのはいいことだ。
けど、元気すぎるのも考えものだな。




