吐息フェチ
……眠れない。
人造妖怪のふーちゃん。
見た目は幼いが、結構ませている。
別にそれは問題ではない。
問題は……距離感だ。
「……ご主人様」
「……っ!?」
どうして……どうして僕はこんなにドキドキしているんだ?
文字の力の効果がまだ続いているのか?
いや、それはない。
童子がきちんとゼロにしてくれたから。
けど、心臓はドキドキしている。どうしてだ?
僕は今まで何度も夏樹(僕の実の妹)と一緒に寝てきた。
だから、女の子に耐性はついているはずだ。
でも、これは明らかにおかしい。
まさか、僕は妙な扉を開けてしまったのか?
「子ども……だからか?」
「ご主人様ー」
「……っ!?」
ふーちゃんが僕の手をギュッと握る。
小さい……僕の手より明らかに小さい。
けど、きちんと脈があってほんのり熱がある。
触っていると落ち着くし安心する。
柔らかい、気持ちいい。
はっ! どうして僕は真面目に感想を述べているんだ!!
考えるな! さっさと寝ろ!!
僕がふーちゃんの手から逃れようとすると、ふーちゃんは僕の胸に顔を埋めた。
「ご主人様ー、好きー」
「ちょ! これはさすがにまずいって!」
吐息が服を貫通して僕の肌に当たる。
こそばゆい。けど、悪くない。
むしろ気持ちいい。
いやいやいやいや、待て待て待て待て!
僕はいつから吐息フェチになったんだ!?
これ以上何かされたら頭がおかしくなる!
というか、もうすでに頭がおかしくなっている!
どうして……どうしてこうなったんだ!
「……ご主人様ー」
「……お、落ち着け。ふーちゃんはただ寝ているだけだ。別に意識してこんなことをしているわけじゃない」
ふーちゃんはその後も僕の指を口に咥えたり首筋に噛みついたり耳を甘噛みしたりした。
こんなことをされて眠れるやつがいるだろうか? いや、いない。
結局、その晩……僕は一睡もできなかった。




