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無
童子はため息を吐く。
「右手、見せてください」
「お、おう」
彼女は僕の右手に人差し指で『無』と書いた。
すると、僕の右手は僕の言うことを聞くようになった。
「あなたは私の想像以上に不器用ですね」
「しょ、しょうがないだろ。最近、ものすごいスピードで強くなってるんだから」
「全てはあなたのためです。鬼の力が暴走して人じゃなくなってしまったら、あなたは世界中を敵に回すことになります。そうはなりたくないでしょう?」
「そりゃもちろん」
「なら、もう少し頑張ってください。まあ、今は安静にしておいた方がいいのですが」
そう、だったな。
「えっと、その……いつもすまないな」
「何を今さら。あなたはいちいち気にしなくていいです。危なくなったら私が助けます」
「頼りになるなー、お前は。俺にお姉さんがいたら、こんな感じなのかなー?」
「さぁ? それはどうでしょうね」




