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改竄

 バイト終了。これより帰宅する。

 バイトが終わると、僕は特に寄り道などせず、真っ直ぐ家に帰っていた。

 え? 真っ直ぐ進むだけじゃ、家に辿たどり着かない?

 たしかにそのまま解釈すると、おかしく聞こえるかもしれないが、それは比喩ひゆ表現の一種なのでスルーしてもらえると助かる。


「明日から、また学校か」


 学校に行って、授業を受けて、昼ごはんを食べて、掃除をして、部活をして、帰る。

 そんなことを繰り返すだけの毎日。

 僕は高校二年生だから、そろそろ進路のことを考えないといけない。

 しかし、将来なりたいものもきたい職業も決まっていない。

 とりあえず学校に行って、とりあえず授業を受けて、とりあえず卒業して、とりあえず大学に行って、とりあえず就職する。

 多分、僕の人生はこれから先、こんな感じだろう。

 けど、何か物足りないような気がするな。

 こい……をしてみたいと思ったことはないけど、興味がないわけではない。

 しかし、僕のような鬼の力を宿す存在に恋人などできるわけがない。

 そう、できるわけなどないのだ。

 というようなことを考えていると、頭上から何かが降ってきた。


「……!?」


 僕は咄嗟とっさに後ろにジャンプして、それを回避した。


「……鬼姫ききちゃーん、どこにいるのー?」


 黒いドレスを身にまとった黒髪ロングの美少女は大鎌をブンブン振り回しながら、そう言った。


「おい、お前。そんな物騒な物を振り回すなよ。危ないだろ?」


 彼女は金色の瞳で僕を見ると、ニヤリと笑った。


「……みいつけたー」


「……!!」


 僕の細胞たちが危険信号をはっしている。

 逃げるか? いや、こいつはおそらく死神だ。

 僕を殺すまで追ってくるだろう。

 なら、どうする?

 戦うか? いや、それはダメだ。

 なぜならば鬼の力は使うな、と座敷童子に言われたからだ。


鬼姫ききちゃーん、遊びましょう」


 彼女が僕に迫ってくる。

 なぜか大鎌を手放して。

 その直後、僕の意識は鬼姫ききと入れ替わった。


「ごめんねー、また今度ねー」


「へ?」


 鬼姫ききはニッコリ笑うと、彼女を吹っ飛ばした。


「あーれー」


 大鎌が彼女の後を追い始めると、鬼姫ききは彼女が飛んでいった方に向かって、手を振った。

 彼女は何事もなかったかのように、帰宅すると僕に体を返した。


「あれ? さっき、記憶に残らないわけがないものをみたような……気のせいかな?」


 彼は自分の記憶が鬼姫きき改竄かいざんされたことに気づかないまま、靴を脱ぎ始めた。

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