単純なやつ
真っ赤な世界にある真っ赤な病院での診察はすぐ終わった。
僕をそこまで導いた全身真っ赤な少女が僕の指や肩を触ったり聴診器を使って心臓の音を聞いたりしていただけだったからだ。
なんでわざわざ病院まで来たのだろう。
というか、どうしてこの子は「愛してる」しか言えないんだろう。
謎が謎を呼ぶ真っ赤な世界。
早く元の世界に戻りたいなー。
僕がそんなことを考えていると全身真っ赤な少女が診察室にあるベッドに僕を押し倒した。
僕はすぐに起き上がろうとしたが、彼女が覆い被さってきたため起き上がろうにも起き上がれなかった。
「あ、あの……」
「愛してる?」
いや、何? ってなんだよ。
「退いてほしいんだけど」
「愛してる!?」
ん? なんだ? 今の反応は。
も、もしかして抱いてほしいって言ったと思ってるんのか?
「あっ、今のはその……」
「愛してる!!」
あっ、ダメだ。完全に勘違いしてる。
彼女は僕に抱きつくと僕の胸に顔を埋めて頬擦りし始めた。
「あー、はいはい、それはもう聞き飽きたよ。だからさ、そろそろ元の世界に……」
「愛してる……」
いや、なんでガッカリするんだよ。
僕はお前のことなんかこれっぽっちも興味ないんだから早く元の世界に戻してくれよ。
「あー、もうー、しょうがないなー。お前の気が済むまでいてやるよ。ほら、好きなだけ甘えていいぞ」
「愛してる!!」
単純なやつだな。




