温泉
……眠れない。
なんでだ? 今日は結構、山道歩いたぞ?
もしかして疲労を感じなくなっているのか?
まあ、いいや。もう一度温泉入ろう。
「……ふいー、こんな夜遅くまで温泉に入れるんだなー。ここの旅館、すごいな」
「当然です。座敷家の旅館なのですから」
「そっかー……って、お前! ここは混浴じゃないんだぞ! なんで男湯にいるんだよ!」
「何を言っているのですか? あなたは今、女湯にいるのですよ?」
んん? 僕はたしかに男湯の暖簾を見てからここまで来たはずなのだが。
はっ! ま、まさか!
座敷童子の童子がニヤリと笑う。
「やっと気づきましたか。まあ、もう遅いですけどね」
マジで僕が来る前に暖簾を入れ替えたのか!
そこまでして僕と一緒に入りたかったのか!?
「つ、通報するのか?」
「そんなことしませんよ。私はただ、あなたと一緒に肌を重ねたいだけです」
「その言い方やめろ! なんかエロいから!」
「失礼しました。乳繰り合うの方が良かったですか?」
「さっきよりエロくなってるぞ! いい加減にしろ! 僕はもう出るぞ!」
「え? 出てしまうのですか? 早漏さん」
「だーかーらー! いちいちエロ方面にするのやめろよー!」
*
「……っていう夢を昨日見たんだ」
「私はそこまでしませんよ。せいぜい、あなたが使ったバスタオルを……な、なんでもありません。今のは聞かなかったことにしてください」
うわあ、今のは普通に引いたわー。
ないわー、今のはないわー。




