慰め
座敷童子が泣き止むと、妹は僕の方を見てきた。
えっ? もしかして、僕が慰めないといけないパターン?
僕が目をパチクリさせると、妹は深く頷いた。
了解した。だがしかし、まずはどうして彼女が泣き始めたのかを訊かないといけない。
「なあ、童子。お前はどうしてあんなに大泣きしたんだ?」
「泣いてなんか……いません」
いや、さすがにあれは近所の人たちにも丸聞こえだったと思うぞ。
「そうか。けど、お前をこのままにしておくわけにはいかないんだよ。だからさ、お前に何があったのか教えてくれないか?」
彼女は指で涙を拭うと、静かにこう言った。
「……あなたを助けたいのに、あなたが私の邪魔をするからです」
「え?」
彼女はスッと立ち上がると、僕を指差した。
「ですから! あなたが私の邪魔ばかりするせいで私は頭を抱えなければならなくなっているのです!!」
「すまん。心当たりがないから、ちゃんと説明してくれないか?」
彼女は、つかつかと僕の元にやってくると怒鳴った。
「私はあなたが鬼の力に支配されないようにしたいのに、あなたがそれと逆のことをしようとするから、私は怒っているのです!」
「あー、それはあれか? 呼吸をするように力をバンバン使うなってことか?」
彼女は「そうです!!」と大きな声で言った。
「そうか。そうだったのか。ごめんな、気づいてやれなくて」
僕が彼女の頭を優しく撫でると、彼女は僕から離れた。
「き、急に何をするのですか! 気安く触らないでください!」
「僕はただ、お前を落ち着かせようとしただけなんだけどな」
僕が俯くと、彼女は僕に近づきながら謝った。
「ご、ごめんなさい。ちょっとビックリしただけなんです。だから……」
「うん、知ってるよ」
僕は彼女を抱きしめると、頭を優しく撫でた。
「あっ! ちょっと! やめてください!」
「やめてほしいなら、いつもみたいに僕の体に文字を書けばいいじゃないか」
彼女はそれに気づいていた。
しかし、あえてそれをしなかった。
それは無意識のうちに、自分が誰かに慰めて欲しかったのだというサインだった。
「……こ、これくらいのことで力を使ったりしませんよ」
「そうか。じゃあ、しばらくはこのままだな」
妹は彼女が照れている様子を温かい目で見守っていた。