ちょっと
どうして童子はずっと僕の後ろに隠れているんだろう。
なんかずっと何かに怯えている。
夏樹が近づいてくるとガタガタ震え始めるし、ものすごい力で僕の手を握る。
僕が眠っている間にいったい何があったんだ?
「そろそろ学校に行かないといけないな」
「そうだねー」
「そ、そうですね……」
いや、本当誰だよ。
お前はそんな臆病なやつじゃなかった。
いつも上から目線で年上ぶってて……まあ、一応年上なんだけど……。
「童子」
「ひゃ、ひゃい!?」
「今日は背中に乗せてやるよ」
「え? 登校中、ずっと……ですか?」
「ああ、そうだ。いいよな? 夏樹」
「別にいいと思うよー。良かったねー、童子ちゃん。あっ、でも抜け駆けしたら許さないからね?」
「ひ、ひいっ!」
「夏樹、あんまり童子をいじめるな。ほら、こんなに怯えてる」
「私、別に何もしてないよ。ちょっと注意しただけだよ」
「お前のちょっとはトラウマになる可能性大だからな。あてにならないんだよなー」
「そ、そんなことないよー。ねえ? 童子ちゃん」
「……ううう……怖い……怖いよ」
「はぁ……完全にトラウマになってるな、これは。完治するのに時間かかるぞー、これは」
「……私、別に悪くないもん!」
「けど、少し後悔している。違うか?」
「うーん……まあ、そうだね」
「なら、責任持って童子を元通りにしないといけないな」
「えー、そんなー。お兄ちゃん、手伝ってよー」
「まあ、少しくらいなら手伝ってやるよ」
「わーい! やったー!」
リビングでそんなことを話していると遅刻しそうな時間になってしまった。
「おっと、そろそろ行かないとまずいな。二人とも忘れ物はないか?」
「うん、ないよー」
「ない……です」
「よし、じゃあ行くぞ」
そんなこんなで今日も一日が始まった。
早く童子が元に戻るといいな。




