お兄ちゃんの部屋
お兄ちゃんの部屋。
「入室! 深呼吸! からのー! ベッドにダイーブ!!」
「え、ちょ、何してるんですか……」
夏樹さんは嬉しそうに雅人さんのベッドに飛び込みました。
彼の枕のにおいを嗅ぎながらニヤけています。それ、同性でもやられたらきついです。
普通に引きます。
「お兄ちゃんの残り香を堪能してるんだよー」
「……ええ」
この人はやっぱりおかしいです。
実の兄のベッドにダイブして枕のにおいを嗅ぐ妹。
漫画やアニメの世界ならあり得なくないですが、実際にやられると普通に気持ち悪いですね。
「ああ、お兄ちゃんのにおいがするー。あー、もうダメ。頭おかしくなっちゃうよー」
もうすでにおかしいということに気づいてください。
お願いします。
じゃないと私は今日眠れません。
「いつまで突っ立ってるのー? 童子ちゃんも来なよー」
「えっと、え、遠慮します」
「逃げる気?」
彼女の殺気から逃れる術はありません。
逃げようとした瞬間にやられます。
「そ、そんなことしませんよー。えーっと、それじゃあ失礼します」
私がベッドに横になると彼女は私を抱き枕代わりにしました。
普通に苦しかったですが耐えるしかありません。
苦行だと分かっていても彼女の言うことは絶対です。
私は彼女が完全に眠りにつくまで枕になりきっていました。
そうしないと殺されると思ったからです。
早く……早く朝にならないかなー。




